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行政指導に従わないとどうなる?|不服がある場合の対処法

2023年06月22日
  • 一般企業法務
  • 行政指導
  • 従わない
行政指導に従わないとどうなる?|不服がある場合の対処法

経営者の方々は、会社に対する行政指導に関しては、さまざまな疑問やお悩みを抱かれることがあります。

「会社が役所から勧告を受けたが、勧告は行政指導にあたるのか?」「行政指導に従わなかった場合には、不利になるのか?」「行政指導に納得がいかないがどうしたらいいのか?」

行政指導そのものに強制力はありませんが、行政指導に従わないと行政処分に発展して、最終的には会社にとって不利益となる処分が行われる可能性もあります。そのため、行政指導には慎重に対応することが大切です。

本コラムでは、行政指導への対応方法や行政指導に関する事例などについて、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説いたします。

1、行政指導に従わないとどうなるのか

まず、行政指導の概要や、行政指導に従わないとどうなるかについて説明します。

  1. (1)そもそも行政指導とは?

    行政指導を端的に表現するなら「行政機関から事業者や個人に対して行われる任意の協力のお願い」ということになります。
    また、行政指導と混同されやすい手続きとして、行政処分が存在します。

    行政処分の場合には、たとえば「3か月の営業停止命令」などのように、対象となる者(経営者など)の意思に反して強制的に処分を執行することができます。
    他方で、行政指導は、対象となる者の意思に反して行うことはできません
    行政手続法第32条第1項では、行政指導の一般原則として、「行政指導はあくまで相手方の任意の協力によってのみ実現される」という旨が定められているためです。

    具体的には、行政手続法では行政指導のことを「行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。」(同法第2条第6号)と定義しています。
    また、後に紹介する判例のように、「勧告」とされる行為であったとしても具体的な状況によっては「処分」に該当する場合があるため、行政指導の定義からは「処分に該当するもの」が除かれています。

  2. (2)行政指導に従わないとどうなる?

    行政指導は任意の要請であるため、強制力が働くものではありません。
    行政手続法32条2項では、行政指導に従わなかったことを理由に不利益な取り扱いをすることを禁止しています。
    したがって、行政指導に従わなかったからといって、それだけで不利益を被ることはないのです。

    ただし、「行政指導に従わなくても不利益を受けないから大丈夫だ」と思って、安心することはできません
    行政指導は行政処分の前段階とされていることが多く、行政指導に従わなかった後に行政処分が下されて、不利益な結果が生じる、という事例も多々あるためです。
    したがって、行政指導を受けた場合には、まずどのような行政指導がなされたのか、その根拠や内容をしっかりと確認したうえで、対応を検討すべきです。

  3. (3)行政指導への対応方法

    上述したように、行政指導に対応するかどうかは任意となっていますが、対応しないと行政処分に発展する可能性があります
    また、会社が行政指導を受けたことが発覚してしまうと、会社の社会的信用性が低下するといった、実際的な不利益が生じる可能性もあるのです。

    行政指導が口頭でされた場合には、行政指導の内容を明らかにした書面の交付を請求することができます。
    また、一定の要件のもとでは、行政指導の中止などの措置を求めることもできるようになっているのです。

    ① 書面の交付(行政手続法第35条第3項)
    口頭によって行政指導を受けたときには、行政指導の趣旨や内容、責任者などを明らかにした書面を求めることができます。
    後の処分に備えて行政指導の内容を明確にするためにも、口頭によって行政指導を受けた場合には、書面の交付を求めるとよいでしょう。

    ② 行政指導の中止など(行政手続法第36条の2)
    法令違反行為に対する是正を求める行政指導では、一定の要件のもとで行政指導の中止や、その他の必要な措置をとることを求めることができます。
    「行政指導に従わない」という意思を明確にしているのにしつこく行政指導が行われるような場合などには、中止などの措置を求めることも検討しましょう。

2、行政指導と行政処分との違い

  1. (1)行政処分とは

    行政処分という手続きは、法律によって直接的に定義されているわけではありませんが、最高裁判所の判決によって以下のように定義されています。

    (昭和39年10月29日最高裁判決)
    行政機関の行為によって「直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」


    ごく簡単に表現すれば、行政処分とは「一方的に対象者の権利や義務に影響を与えることができるもの」ということになります。

  2. (2)行政処分と行政指導の違い

    行政処分と行政指導のもっとも大きな違いは、行政処分は対象の意思とは関係なく一方的に対象の法的な権利や義務に影響を与えることができる点に対して、行政指導は従うかどうかが対象の任意に委ねられているという点です。

    この違いがあるために、行政処分と行政指導では、その争い方も大きく異なっています

    行政処分に対して不服がある場合には、基本的には、処分の取消訴訟(行政事件訴訟法第3条第2項)を行うことになります。
    処分取消訴訟とは、行政処分が行われ、対象者の権利義務や法的な地位に影響が及んでしまった効果を払しょくすることを目的に行われるものです。
    たとえば行政機関から営業許可の取り消し処分などがされてしまったときには、「許可が取り消されてしまった」という事態の解消を目指して、処分取消訴訟が行われます。

    一方で、行政指導がなされても権利義務や法的な地位の変動はせず、取消訴訟で取り消しを求める効果がそもそも存在しないために、行政指導に対して取消訴訟を行うことはできないのです。

3、行政指導に関する裁判例

以下では、「行政の行った勧告は行政指導であったか、行政処分であったか」ということが問題になった事例に関する判例を紹介します。

前述のとおり、行政指導は取消訴訟の対象にはなりませんが、行政処分なのであれば取消訴訟の対象となり、違法であると認められたら処分を取り消すことができます。
したがって、行政からの勧告に対して取り消しを求めようとしたときにも、「行政指導なのか、行政処分なのか」という点が重要になるのです。

【病院開設中止勧告事件(最高裁平成17年7月15日判決)】

(事案の概要)
原告は、知事に対して病院の開設の許可を申請したところ、知事は、医療法に基づいて病院の病床数が必要病床数に達しているという理由で本件申請に係る病院の開設を中止するよう勧告しました。
原告がこの勧告に従わずに許可を申請したところ、開設の許可は認められたものの、「中止勧告に従わない場合には保険医療機関の指定の拒否をする」という旨が通告されました。
そこで、原告は、中止の勧告及び上記通告の取り消しを求めて、中止の勧告及び上記通告が行政処分にあたるとして処分の取消訴訟を提起しました。

(裁判所の判断の要旨)
結論として、最高裁は、この中止勧告が処分であることを認め、取消訴訟の対象となるとしました。

<最高裁判決から引用>
医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。
(…中略…)
このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると、この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為」にあたると解するのが相当である。


この判例は、法令の仕組み及び運用の実情をふえて、「機関の行為が、その対象者の権利義務や法的な地位(本件でいえば、病院開設を断念するしかないという効果)に影響を及ぼすものかどうか」いう観点から判断したものです。

病院解説に限らず他の場面においても、形式的には「行政指導」にあたる勧告でも、その勧告に従わないと実質的に不利益がもたらされるという場合には「行政処分」とみなされて、取り消し訴訟の対象にできる可能性があります。

4、行政指導を受けたら弁護士に相談

「行政指導は任意の要請であることから、従わなくとも大丈夫だ」と安易に判断してしまうと、後に行政処分に発展して、事業活動に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
行政指導を受けてしまったら、まずは弁護士にご相談ください。
専門家である弁護士なら、行政指導の内容や法的な根拠を検討して、適切な対応をとることができます

また、行政指導に対する争い方には、「行政指導の中止を求める」「行政指導ではなく処分まで待ってから取り消し訴訟を提起する」「行政指導とされているが実質的には行政処分であると示したうえで取り消し訴訟を提起する」など、さまざまな選択肢があります。
さらに、行政指導が違法であった場合には、行政に対して損害賠償請求を行うことも検討できます(国家賠償請求訴訟の提起)。
弁護士であれば、「どのように争うべきか」「損害賠償を請求すべきか」といったポイントについても、専門的な知識や経験に基づきながら正確に判断することができます

5、まとめ

行政指導を受けた場合には、「そもそもそ行政指導にあたるのかどうか」「行政指導にあたる場合には不服申し立てをするかどうか」「行政処分がそのあとに行われるかどうか」など、さまざまな要素を検討しながら、適切な対応をとることが大切です。

全国に展開するベリーベスト法律事務所では、行政問題への対応実績も豊富であり、行政指導に関してお悩みを抱かれている経営者の方に最適なアドバイスやサポートを提供いたします。
もし経営されている企業が行政指導を受けたら、まずはベリーベスト法律事務所までご連絡ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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