外資系企業のリストラはよくある? 違法となるケースや対処方法は
- 不当解雇・退職勧奨
- 外資
- リストラ
令和4年度に大阪府内の総合労働相談コーナーに寄せられた労働に関する相談のうち、解雇に関わるものは3728件でした。
外資系企業は日本企業に比べて、従業員のリストラを積極的に行う傾向があります。しかし、外資系企業の日本支社などで働く従業員には、日本の厳しい解雇規制が適用されます。外資系企業といえども、安易なリストラは違法となる可能性が高いため、もし一方的なリストラを通告されたら、弁護士に相談して対応策を検討しましょう。
本コラムでは、外資系企業のリストラについて、法規制や従業員側の対処法などをベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説します。
1、突然のリストラが多い? 外資系企業の特徴とその理由
外資系企業では、従業員を突然リストラするケースが多い傾向にあります。その理由としては、主に以下の2点が挙げられます。
外資系企業は成果主義の傾向が強く、能力やパフォーマンスに劣る従業員は、比較的短期間で解雇することがよくあります。
② 海外では解雇規制が緩やかな地域が多い
日本の解雇規制は非常に厳しい一方で、海外では解雇規制が緩やかな地域が多いです。本国の解雇規制が緩やかな場合は、日本支社にもその感覚を持ち込んで、従業員を積極的にリストラするケースがあります。
2、外資系企業でも一方的なリストラは違法の可能性が高い
外資系企業であっても、日本国内で働いている従業員は、解雇規制を含む労働法の強行規定の適用を主張できます(法の適用に関する通則法第12条)。
そのため、外資系企業による日本の従業員の一方的なリストラは、違法と判断される可能性が高いです。
-
(1)外資系企業にも適用される、日本の厳しい解雇規制
日本において、解雇は「懲戒解雇」「整理解雇」「普通解雇」の3種類に分類されます。
各解雇は、以下の要件を満たす場合に限り行うことができます。① 懲戒解雇- 就業規則上の懲戒事由に該当すること
- 就業規則において、懲戒解雇があり得る旨が定められていること
② 整理解雇
以下の4要件に照らして、整理解雇の客観的合理性および社会的相当性が認められること- 整理解雇の必要性
- 解雇回避努力義務の履行
- 被解雇者選定の合理性
- 解雇手続きの妥当性(労働者側に対する説明等)
③ 普通解雇
- 労働契約上または就業規則上の解雇事由に該当すること
さらに、上記に加えて解雇権の濫用に当たらないことも必要です。
客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、解雇権の濫用として無効となります(労働契約法第16条)。 -
(2)リストラが違法となるケース
たとえば以下のような外資系企業におけるリストラは、違法と判断される可能性が高いです。
(例)
- 仕事上のパフォーマンスが劣っている従業員を、十分な改善指導を行わないまま解雇した。
- ミスをした従業員に対して全く仕事を与えず、精神的に追い込んだ上で退職に追い込んだ。
- オフィスのカードキーの入館権限を突然はく奪し、一方的に解雇を通告した。
-
(3)リストラが法的に認められるケース
これに対して、以下のような形で行われるリストラは、法律上問題ないと考えられます。
(例)
- 希望退職者を募集し、自発的に応募してきた従業員を合意退職させた。
- パッケージ(退職金など)を提示した上で退職勧奨を行い、それに応じた従業員との間で退職合意書を締結し、退職させた。
3、外資系企業をリストラされそうになった場合の対処法
外資系企業を一方的にリストラされそうになったら、以下の方法によって対処しましょう。
-
(1)会社にリストラの撤回を求める
日本では、会社が一方的に従業員をリストラできるケースは少ないです。外資系企業の日本支社などにも日本の解雇規制は適用されるので、一方的なリストラは違法の可能性が高いと考えられます。
従業員としては、まず会社に対してリストラの撤回を求めましょう。リストラに法的な根拠がないことを主張すれば、会社側は撤回に応じるかもしれません。
また、最終的には退職を検討しているとしても、当初の段階ではリストラの撤回を主張した方が、交渉を優位に進めやすい側面があります。ひとまずリストラの撤回を主張して、会社の交渉態度を見るのがよいでしょう。 -
(2)退職金の上乗せなどを求める
退職を受け入れる代わりに、退職金の上乗せなどを求めることは、外資系企業のリストラに関する交渉においてよく見られます。
外資系企業は、リストラしようとする従業員に対してパッケージ(特別退職金など)を提示することがあります。パッケージの金額は、賃金の6か月分から2年分程度とされるケースが多いですが、内容や金額については交渉可能です。会社の提示をそのまま受け入れる必要はありません。
特に、リストラに合理的な理由がない場合には、パッケージの増額交渉が成功しやすい傾向にあります。弁護士が代理人としてリストラの不当性を主張すれば、パッケージの増額を得られる可能性が高まるでしょう。 -
(3)労働審判を申し立てる
会社がリストラの撤回やパッケージの増額などの交渉に応じない場合には、裁判所に労働審判を申し立てることが考えられます。
労働審判は、労使紛争を迅速に解決することを目的とした法的手続きです。裁判官1名と労働審判員2名で構成された労働審判委員会が、労使の主張を公平に聞き取った上で紛争解決を試みます。労使の合意が成立すれば調停により、合意が成立しなければ労働審判によって結論が示されることになります。
労働審判の審理は原則として3回以内で終了するため、訴訟に比べると迅速な解決を期待できます。
その反面、初回の期日までに十分な準備を整えて臨むことが大切です。弁護士のサポートを受けながら、リストラの不当性を訴える主張と証拠を準備しましょう。
参考:「労働審判手続」(裁判所) -
(4)訴訟を提起する
労働審判に対して異議が申し立てられた場合は、自動的に訴訟手続きへ移行します。また、労働審判を経ずに訴訟を提起することも可能です。
訴訟は、裁判所の公開の法廷で行われる紛争解決手続きです。不当にリストラされた従業員は、リストラの無効と従業員としての地位確認を求めて訴訟を提起することができます。
訴訟に臨む際には、リストラの不当性がわかる証拠をそろえ、裁判所に対して説得的に主張を伝えることが大切です。訴訟手続きは専門性が高いので、適切に準備や対応を行うためには弁護士のサポートを受けましょう。
4、外資系企業のリストラについて弁護士ができるサポート
外資系企業をリストラされそうになっている方は、弁護士に相談することをおすすめします。
外資系企業からのリストラについて、弁護士は主に以下のサポートを行っています。
-
(1)リストラの撤回・パッケージの増額等に関する交渉
リストラの撤回やパッケージの増額等に関する会社との交渉は、弁護士が全面的に代行します。弁護士が法的な根拠に基づく主張を行うことにより、復職や好条件での退職など、従業員にとって望ましい結果を得られる可能性が高まります。
-
(2)労働審判の申立て・期日対応
労働審判の申立てを弁護士が代理して行います。期日に向けた準備も全面的に弁護士が行いますので、裁判官や労働審判員に対して説得的に主張を伝えることができ、有利な解決につながりやすくなります。
-
(3)訴訟の提起・期日対応(代理人としての活動)
リストラの無効等を主張する訴訟を提起する際には、弁護士が訴訟代理人として活動します。訴訟は、訴訟法・実体法の双方の専門的知識が必要なため、法的に有効な主張を適法かつ有効に行うためには、弁護士にご依頼いただくことを強くおすすめします。また、対応をお任せいただくことで、労力やストレスが大幅に軽減されます。法的な根拠に基づく主張・立証を行うことにより、有利な判決を得る可能性が高まります。
5、まとめ
外資系企業では、本国における企業文化や緩やかな解雇規制などが影響して、従業員を積極的にリストラする傾向にあります。しかし外資系企業であっても、日本で働く従業員を一方的にリストラすることは違法となる可能性が高いです。
もし一方的に外資系企業をリストラされそうになったら、弁護士に依頼して会社に対抗しましょう。リストラの無効主張やパッケージ交渉など、リストラに関するトラブルを有利に解決するための対応を行ってもらえます。
突然リストラを通告されてしまい、対処に困っている外資系企業で働く従業員の方は、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスにご相談ください。労働問題に関する経験豊富な弁護士が、お客さまのために有利な解決を目指してサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
- |<
- 前
- 次
- >|