子どもがいじめをしたと内容証明が届いたときの対処法
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大阪市天王寺区では、いじめや不登校などの問題解決に向け、小・中学校に臨床心理士(スクールカウンセラー)を配置し、児童生徒だけでなく保護者などに対してもカウンセリングを行っています。令和3年度に受けた相談件数は320件、解決や改善に至った件数は179件で、相談件数が年々増加していること、子どもを取り巻く問題が多様化していることなどが課題に挙げられています。
子どもがトラブルに巻き込まれた場合、慎重に対応する必要があるでしょう。それでも、カウンセリングなどでは解決できず、場合によっては法的トラブルに発展することもあります。特に、自分の子どもがいじめをした旨の内容証明郵便が届いた場合、親としては対処に困るところです。
今回は、子どものいじめを追及する内容証明郵便が届いた際の対処法について、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説します。
1、内容証明郵便とは?
内容証明郵便は、法律トラブルの当事者同士の間でやり取りされることが多い文書です。
まずは内容証明郵便の概要と主な送付目的について、基本的な知識を押さえておきましょう。
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(1)郵便局が内容等を証明する郵便物
内容証明郵便とは、郵便局が宛先・差出人・内容・差し出し日時を証明する郵便物です。
裁判所を通じて送付される法的書面ではありませんが、客観的な立場にある郵便局が内容等を証明するため、文書として高い証拠価値が認められています。 -
(2)内容証明郵便を送付する主な目的
内容証明郵便は、その文書を発送したこと(発送日時を含む)や、文書の内容を明確な証拠として残しておきたい場合に使用されるケースが一般的です。
また、メールや通常の郵便などよりも「正式な文書」という印象を与えやすいため、相手に対して強いメッセージを伝える目的で、内容証明郵便が送付されることもあります。
内容証明郵便を発送する主な目的としては、以下の例が挙げられます。- 消滅時効の完成を猶予するため(民法第150条第1項)
- 法律や契約に基づき必要な通知を行うため
- 何らかの権利侵害を主張する場合に、相手に対して主張内容を明確に伝えるため
具体的には、身近な一例でいえば、損害賠償請求を行うときや、未払いの残業代を請求するとき、離婚に伴い財産分与や慰謝料の支払いを求めるときなど、法的な根拠を持って相手方に何かを求めたいというケースで用いられることが多いといえます。
2、子どものいじめを追及する内容証明郵便が届いた場合の対処法
自分の子どもがいじめの加害者であることを主張する内容証明郵便が、他の子どもの親から届くケースがあるようです。
親としては、対応を間違えると深刻なトラブルに発展する可能性があるため、弁護士に相談しながら慎重に対応することが大切です。
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(1)事実関係を確認する
親の立場からは、子どもが学校でどのように過ごしているかについて、そのすべてを把握することは不可能です。そのため、まずは子どもから話を聞く時間を設けて、いじめの有無などの事実関係を慎重に確認しましょう。
その際には、決して子どもを問いただすのではなく、子どもの心情に寄り添いながら、客観的に起こったことを正確に聞き取るよう努めることが大切です。今後の対応方針を適切に判断するために、正しい事実関係を確認する必要があることを子どもに伝えてみるのもよいでしょう。
親同士の付き合いがある場合には、他の子どもの親に学校での状況を聞いてみることも有効な方法です。
ただし、相談内容を吹聴されると、学校での子どもの立場を悪くしてしまうおそれがあります。具体的な事実について確認したり相談したりする相手は信頼できる方に限ることをおすすめします。 -
(2)弁護士に相談して返答内容を検討する
内容証明郵便に対する返答内容は、弁護士に相談しながら検討・決定したほうがよいでしょう。法律を熟知していない方やご自身だけの判断で返答すると、相手から揚げ足を取られるなどトラブルを拡大するおそれがあるためです。
基本的には、「子どもがいじめの加害者である」という相手の主張が事実であるか否かによって、返答の方針が大きく変わってきます。
いじめが事実であれば、相手方に謝罪しつつ、穏便な解決を図る方針を採ることになるでしょう。場合によっては示談金を支払うなどの対応も検討すべきですが、具体的な金額については過去の裁判例などを踏まえて検討する必要があります。
これに対して、いじめが事実でない場合には、相手方の主張を真っ向から否定して戦うことになるでしょう。仮に相手方が、他人に対していじめの被害を吹聴し、子どもの名誉を傷つけるような行動を取っている場合には、名誉毀損による刑事告訴や損害賠償請求も検討すべきです。
いずれにしても、正確な事実関係に基づく適切な対応が求められます。まずは弁護士にご相談のうえで方針を検討することをおすすめします。
3、受け取った内容証明郵便を無視するとどうなる?
子どものいじめを追及する内容証明郵便に対して、何も返答せず無視していると、相手方とのトラブルを深刻化させてしまうおそれがあります。
内容証明郵便が届いても無視をしていた場合、どのようなことが起こり得るのでしょうか。
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(1)相手の感情を刺激する可能性がある
相手方の立場からすれば、内容証明郵便を送ったにもかかわらず何も返答がないと、憎悪の感情をヒートアップさせてしまうケースが多いでしょう。
その結果、さらにしつこく内容証明郵便を送ってきたり、知らないところで他人にいじめの被害を吹聴したりする行動に出るかもしれません。また、一度相手の感情を刺激してしまうと、和解による解決が難しくなることも懸念されます。
話し合いで穏便に解決したいと考えている場合には、取りあえず調査するから○日まで待ってほしいなど、少なくとも何らかの返答を行っておくなどの対応を検討すべきです。 -
(2)訴訟を提起される可能性が高い
内容証明郵便を送付することには、トラブルの相手方に対して和解交渉を提案する意味合いもあります。
しかし、内容証明郵便に対して何らかの返答もしない場合、相手方は「和解交渉を拒否された」と判断する可能性が高くなるものです。そうなると相手方としては、訴訟を中心とした法的手続きによる解決を目指すほかありません。
もし相手方に訴訟を提起されれば、数か月から1年以上にわたって、裁判所の法廷でいじめの有無などを争うことになります。長期間にわたる訴訟手続きへの対応には、時間・労力・費用の観点から大きな負担が発生するものです。子ども自身の精神的な負担も当然大きくなることから、親としてはできる限り避けたいとお考えになることは当然といえます。
相手方から訴訟を提起される事態を回避したい場合には、いじめが事実であってもそうでなくても、ひとまず内容証明郵便に対する返答を行うのがよいでしょう。少なくとも、一度何らかの返答を行えば、相手方から次の返信が来るまで、今後の対応方針を検討・判断する時間を確保できます。返答の内容に悩む場合は、速やかに弁護士に相談してください。 -
(3)刑事告訴されることもあり得る
追及されているいじめの内容が、暴行・傷害・名誉毀損・侮辱などの犯罪に該当する場合、相手方はいじめ被害について、警察に刑事告訴を行う可能性もあります。
刑事告訴が行われた場合、加害児童とされた子ども本人や家族が警察による取り調べの対象になることも見込まれます。また、いじめが事実であれば、家庭裁判所による処分等の対象になる可能性も否定できません。
いじめについて何らかの処分が行われてしまうと、子どもや家族の生活に大きな影響が生じてしまいます。もし、いじめが事実である場合には、相手方に刑事告訴を思いとどまらせるためにも、内容証明郵便に対して謝罪などを含む返答を行っておくべきでしょう。
4、子どものいじめに関するトラブルは弁護士にご相談を
前述の通り、子どものいじめに関するトラブルは、状況次第で刑事事件に発展する可能性もあります。その場合、子どもに対する重すぎる処分を避けるためにも、弁護士によるサポートを受けることをおすすめします。
弁護士は、いじめが事実でなければその旨を毅然と主張します。他方で、いじめが事実であれば社会における更生を訴えるなど、子どもが不当な処分を免れることができるように最大限尽力します。
また、子どもがいじめをしたという理由で相手方から損害賠償を請求された場合にも、弁護士へのご依頼がおすすめです。事実関係や過去の裁判例などを踏まえて、子どもやその親が不当な損害賠償責任を負わないようにサポートします。
学校でのいじめなど、子どもに関するトラブルに巻き込まれてお悩みの方は、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
子どものいじめを追及する内容証明郵便が届いた場合、無視していると相手方の感情を刺激し、訴訟や刑事告訴などに発展してしまうおそれが強くなります。そのため、早い段階で弁護士にご相談のうえで、返答に関する方針を検討しましょう。
弁護士にご相談いただければ、子どものいじめに関するトラブルの拡大を防ぎ、速やかに事態を収拾できるように尽力します。刑事・民事の両面において、子どもが不当な責任を負わされる事態を防ぐためには、弁護士へのご相談がおすすめです。
ベリーベスト法律事務所は、学校生活におけるトラブルに関するご相談を随時受け付けております。事件解決までの見通しや、弁護士費用などをわかりやすくご説明しますので、安心してご依頼いただけます。
子どもが学校でのトラブルに巻き込まれてしまった場合には、お早めにベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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