教育虐待で離婚する方法|子どもを守るためにできること

2025年05月22日
  • 離婚
  • 離婚
  • 教育虐待
教育虐待で離婚する方法|子どもを守るためにできること

大手塾の調査によると、令和6年度の大阪府の中学受験率は10.17%で2年連続10%を超えています。大阪府では高等教育無償化が段階的に始まっており、私立中高一貫校などの受験への関心が高まる要因のひとつになっています。

「妻が子どもに食事時間や睡眠時間を削ってまで勉強をさせている」「夫がテストで満点が取れなかった子どもを叩く」…このような理由で離婚をご検討されている方はいらっしゃいませんか? これらの行動は「教育虐待」に該当します。教育虐待は子どもの心身を傷つける許されない行為です。教育虐待から子どもを守るために、早期に対策を取るべきでしょう。

本コラムでは、教育虐待(児童虐待)の定義や子供に与える影響、教育虐待を理由に離婚を考えたときにやるべきことをベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説していきます。


離婚・男女問題を弁護士に相談 離婚・男女問題を弁護士に相談

1、どこからが教育虐待になる?

教育虐待には明確な定義はありませんが、一般的には、児童虐待の中で教育のためという名目で行われる虐待が「教育虐待」といわれています。

児童虐待の定義と、それに当てはまる可能性のある教育虐待の項目についてみていきましょう。

  1. (1)児童虐待の定義

    児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)において、以下の4種類の言動が「児童虐待」と定義されています。



    ① 身体的虐待
    「身体的虐待」とは、「児童の身体に外傷が生じる、または生じるおそれのある暴行を加えること」です。具体的には以下の言動が身体的虐待に該当します。

    • 打撲傷やあざ、骨折、たばこの火傷などの外傷を生じさせる行為
    • 首を絞める、殴る、投げ落とす、熱湯をかける、逆さ吊りにする、冬に戸外へ閉め出すなどの生命に危険のある暴行
    • 意図的に子どもを病気にさせる
    など


    ② 性的虐待
    「性的虐待」とは、「児童にわいせつな行為をすること、またはわいせつな行為をさせること」です。具体的には以下の言動が性的虐待に該当します。

    • 子どもへの性交や性的行為
    • 子どもの性器を触る、または子どもに性器を触らせるなどの性的行為
    • 子どもに性交や性器を見せる
    • 子どもをポルノグラフィーの被写体に強要する
    など


    ③ ネグレクト
    「ネグレクト」は、「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食、または長時間の放置、監護を怠ること」です。具体的には以下の言動がネグレクトに該当します。

    • 食事を与えない
    • 酷く不潔な環境で生活させる
    • 重い病気になっても病院に連れて行かない
    • 乳幼児を家に残して外出する
    • 同居人による子どもへの虐待を放置する
    など


    ④ 心理的虐待
    「心理的虐待」とは、「児童対する著しい暴言、または著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力、その他児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと」です。具体的には以下の言動が心理的虐待に該当します。

    • 言葉で脅す
    • 無視したり拒否の態度を示したりする
    • 配偶者に暴力を振るったり暴言を吐いたりする
    • 子どもの自尊心を傷つける言動をする
    • 他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする
    など


    このように、親が子どもに対して行う身体的虐待、性的虐待、育児放棄、心理的虐待が「児童虐待」に当たります。

  2. (2)児童虐待と認められる可能性のある教育虐待の内容

    法的に児童虐待と認められる可能性のある教育虐待の言動の例をみていきましょう。

    ① 暴力を振るう
    • 成績が上がらない、勉強がわからないなどを理由に暴力を振るう
    • 勉強机の椅子に縛り付ける

    ② 罵倒する、褒めない
    • 少しの間違いを執拗に罵る
    • 成果を出しても、当然だと突き放し認めない。

    ③ 食事、睡眠等を制限する
    • 勉強のために深夜・早朝まで勉強させ、寝させない
    • ノルマをこなすまで食事を与えない

    ④ 子どもの自由時間を奪う
    • 受験勉強を強要して休日も塾や習い事を詰め込み友達と遊ばせない
    • テストの点数が悪かったことを理由に友達と遊びに行く約束を破らせる


    これらの言動は教育虐待(児童虐待)に該当する可能性があります。

2、教育虐待を受け続けた子どもはどうなる?

教育虐待を受け続けて子どもが育った場合、子どもにはどのような影響があるのでしょうか? 考えられる悪影響についてみていきましょう。

  1. (1)精神疾患になる可能性

    教育虐待を受け続けた子どもは、複雑性PTSDやうつ病といった精神疾患になる可能性があります。

    複雑性PTSDとは、慢性的な心の外傷が原因で発生する精神障害です。通常のPTSDよりも複雑な症状(感情規制の難しさ、自己評価低下、フラッシュバック、対人関係回避など)がみられます。

    うつ病は気分が落ち込みやすくなる精神障害です。「勉強ができない自分が悪い」「苦しいと思う自分が悪い」というように、自分を責める傾向が強い子どもがうつ病になってしまう可能性もあるでしょう。

  2. (2)学校での問題行動、不登校

    教育虐待を受けると、自己評価の低さから良好な人間関係を築くことができず、学校で暴力を振るうような問題行動を起こしてしまう可能性や、不登校になってしまう可能性もあるでしょう。

  3. (3)親を憎むようになる

    教育虐待の結果、子どもが親を憎むようになったり、将来的に子どもが親と縁を切ったりすることも考えられます。

    平成30年には、幼少期から受けていた教育虐待に起因して娘が母親を殺害する事件も起きています。殺人犯となった場合、長期の服役を免れないことが多く、出所後も子どもの将来の選択肢は大幅に制限されることになるでしょう。

3、子どもへの教育虐待を理由に離婚を考えたときにやるべきこと

配偶者の子どもへの教育虐待を理由に、離婚をしたいと考えた場合にやるべきことをご紹介します。

  1. (1)教育虐待について相談する

    まずは、教育虐待について配偶者と話し合いでの解決を図りましょう。

    児童相談所や子ども家庭支援センター、カウンセリングを受けられる病院などに相談し、第三者の意見を聞くことで配偶者と冷静に話し合える可能性もあります。

    それでも配偶者が教育虐待をやめない場合、離婚に向けての準備を始めましょう。

  2. (2)虐待の証拠を集める

    配偶者と親権者争いになった場合、最終的には裁判になります。離婚裁判では、裁判官が証拠をもとに争いについての判決を下すため、配偶者が教育虐待をしていたことが客観的にわかる証拠が重要です。

    そのため、まずは教育虐待の証拠を集めます。以下の証拠が有効でしょう。

    • 暴力、暴言の録音や録画
    • 教育虐待について書いた日記
    • 児童相談所などへの相談記録
    • 教育虐待で受けた怪我の写真や診断書
    など


  3. (3)弁護士のアドバイスを受ける

    離婚を自分と子どもにとって有利に進めるためには弁護士などの専門家のアドバイスを受けることも重要です。

    弁護士に依頼することで、証拠集めのアドバイスや、調停離婚・裁判離婚になった場合に有利に進めるためのサポートをしてもらうこともできます。また、離婚後のトラブルを防止するためのアドバイスや対応を任せることも可能です。

  4. (4)子どものメンタルケアをする

    配偶者からの教育虐待がひどい場合は、子どもを守るためにも直ちに別居を検討しましょう。

    その際は、子どもが自分を責めたり思いつめたりしないように「子どものせいで両親が離婚することになったわけではない」と伝えるなど、子どもへの配慮を忘れてはいけません。医療機関(心療内科など)の受診もご検討ください。

    まずはお気軽に
    お問い合わせください。
    電話でのお問い合わせ
    【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
    メールでのお問い合わせ
    営業時間外はメールでお問い合わせください。

4、離婚後の生活はどうなる? 養育費、親権について

教育虐待で離婚する場合、配偶者には養育費、財産分与などの金銭を請求できます。

話し合いで離婚する場合は、取り決め内容に強制執行認諾文言を入れた「公正証書」にしておきましょう。公正証書は公文書です。「支払いが滞れば強制執行を受ける旨に合意した」という文書を入れて公正証書を作成することで、支払いが滞った場合に裁判を起こさずに強制執行をすることができます。

また親権についてですが、現行法では離婚する場合、どちらかの親が親権者になる「単独親権」しか認められていません。しかし、令和8年からは「共同親権」が導入されるため、離婚時に単独親権が共同親権か選択できるようになります。

ただし、共同親権の制度は、配偶者の子どもに対するDV等の事情がある場合には共同親権を回避することが可能です。したがって、教育虐待を理由とした離婚の場合も共同親権を回避できるケースに該当するでしょう。

子どもに虐待をした親に面会交流(非親権者と子どもの離婚後の交流)を希望された場合も拒否できる可能があります。

ご不安な方は一度弁護士に相談することをおすすめします。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ
営業時間外はメールでお問い合わせください。

5、まとめ

教育虐待は子どもの心身を深く傷つける行為です。
教育虐待を理由に離婚を検討する場合は、まずは児童相談所などの第三者へ相談しましょう。配偶者がそれでも考えを改めない場合、親権をとって離婚するためにも虐待の証拠を集めることが重要です。

弁護士に相談することで証拠集めへのアドバイスや相手との交渉などを任せることもできますので、子どもを守るためにも早めに弁護士に相談することをおすすめします。

その際は、ぜひベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています