調停離婚で認められやすい離婚理由とは? 伝え方や有利に進めるポイントを解説
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大阪府が公表している「令和5年 人口動態調査の結果」によると、令和5年の大阪府における離婚件数は14556件でした。
夫婦の話し合いで離婚の合意がまとまらないときは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。離婚調停は、話し合いによって進められますが、その際に重要なのが離婚理由です。提示する離婚理由によっては、その後の離婚調停を有利に進められる可能性があるため、事前にしっかりと準備をしていきましょう。
今回は、離婚調停で認められやすい離婚理由や、離婚調停を有利に進めるためのポイントについて、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説します。


1、離婚調停で認められやすい離婚理由とは?
夫婦が離婚に至る理由はさまざまですが、離婚調停で認められやすい離婚理由はどのようなものか、詳しく紹介しましょう。
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(1)離婚調停で認められやすい離婚理由は?
離婚調停で離婚が認められやすい理由は、その理由が民法で定められた法定離婚事由に該当する場合です。法定離婚事由に該当する事情があると認められれば、相手が離婚を拒否していても離婚が認められる可能性が高いでしょう。
もし離婚調停が不成立となり、離婚裁判に進むことになっても、法定離婚事由に該当する事情があれば、離婚が認められやすくなります。
法定離婚事由は、次の5つがあります。
① 不貞行為
不貞行為とは、配偶者が自由な意思に基づき、配偶者以外の人と性的な関係を持つことです。いわゆる不倫や浮気などが該当しますが、法定離婚事由の不貞行為として認められるためには、単なるデートやキスだけではなく、肉体関係があったという証拠が必要になります。
② 悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、正当な理由がないのに夫婦の一方が同居・協力・扶助義務に応じない状態です。悪意の遺棄の代表的なケースには、以下のような例が挙げられます。- 勝手に自宅を出ていき、愛人と一緒に生活している
- 収入があるのに、生活費を一切渡さない
③ 3年以上の生死不明
配偶者の居場所がわからず、生死不明の状態が3年以上続いている場合には、離婚が認められる可能性があります。
ただし、単に連絡が取れないだけでは、生死不明とはいえません。
④ 回復の見込みがない強度の精神病
配偶者が回復の見込みのない強度の精神障害にかかっていて、夫婦の共同生活を継続することができない場合には、離婚が認められる可能性があります。
ただし、令和6年5月に改正民法が公布されたことにより、今後この法定離婚事由は削除される予定です。
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由
上記の4つの法定離婚事由に該当しない場合であっても、夫婦関係が回復困難な状態といえるほど破綻していると認められれば、離婚が認められる可能性があります。 -
(2)離婚調停で丁寧な説明を要する離婚理由とは?│性的不一致・価値観の相違
配偶者と考え方や価値観が合わない、といった理由で離婚したい方もいるでしょう。しかし、性格の不一致や価値観の相違は、⑤に該当する可能性があるものの、これらの理由は、夫婦のどちらか一方に明確な非があるわけではありません。
そのため、性格の不一致・価値観の相違により離婚を求める場合には、調停委員に対して丁寧に説明をする必要があります。具体的には、それらの理由で婚姻関係が回復困難なほど破綻していることを示しましょう。 -
(3)離婚調停で離婚を説明する流れ
離婚調停は、調停委員が申立人と相手方からそれぞれ話を聞き、合意の成立に向けた調整が行われます。調停委員からの事情確認では、夫婦が交互に話を聞かれるため、配偶者と直接顔を合わせる心配はありません。そのため、遠慮することなく、離婚を決意した経緯や理由などを調停委員に伝えることができるでしょう。
なお、調停委員から聞かれる内容としては、主に以下のような事項があります。- 結婚した経緯
- 離婚を決意した理由
- 現在の夫婦関係の状況
- 子どもに関すること
- 夫婦関係を修復する可能性の有無
- 希望する離婚条件
- 離婚後の生活
2、離婚調停で離婚理由を説得的に伝える方法とは?
調停委員に離婚理由を納得しやすく、つまり説得的に伝えることができれば、離婚調停を有利に進められる可能性があります。以下では、離婚調停で離婚理由を説得的に伝える方法について説明します。
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(1)臆測や感情ではなく事実を話すようにする
調停委員には、臆測や感情などの主観ではなく、客観的な事実に基づいて話をするようにしましょう。
臆測や感情で話しても、調停委員は事実関係を把握できないため、無駄に時間を費やしたと思われるかもしれません。さらに、調停委員に与える印象も悪くなる可能性があるでしょう。
たとえば、「夫から毎日嫌なことばかり言われてつらい」と説明するよりも「夫から、死ね、役立たずといった言葉を投げかけられる」など、具体的な事実に沿って説明することで、離婚理由の説得力がつきやすくなります。 -
(2)証拠を収集・保管しておく
事実をもとに話す際は、事実関係を裏付ける証拠も用意しておくことをおすすめします。
そのためには、調停の前に自分の主張を裏付ける証拠を収集し、保管しておくことが大切です。
ただし、不貞行為などの離婚理由によっては、配偶者に証拠を隠滅させられる可能性もあります。そのため、離婚を切り出す前に証拠を確保しておくようにしましょう。 -
(3)事前に話す内容や離婚条件を書面にまとめておく
離婚調停は、人生で何度も経験することは少ないでしょう。特に初めての離婚調停では、緊張や不安から、調停委員にうまく話ができないこともあるかもしれません。
自分の主張を思いどおりに伝えるためにも、話す内容や離婚条件は事前に書面にまとめておくのがおすすめです。当日、書面を見ながら話をすることで、伝え漏れを防ぐこともできるでしょう。
3、離婚調停を有利に進めるためのポイントとは?
離婚調停を有利に進めるために、いくつかポイントを挙げました。確認していきましょう。
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(1)法定離婚事由を主張する
離婚調停は、基本的には話し合いの手続きであるため、法定離婚事由がなくても当事者双方の合意があれば離婚できます。
しかし、法定離婚事由があれば、調停が成立しなくても裁判に進むことで離婚が認められる可能性が高いでしょう。配偶者も、いずれ裁判で離婚が認められるとわかれば、時間やお金をかけて争うより、調停で解決しようとするかもしれません。相手が早期解決を目指す場合、多少強気の条件を提示しても、認められる可能性があるでしょう。
そのため、法定離婚事由に該当する事情があれば、離婚調停で積極的に主張していくようにしましょう。その際には、証拠に基づいて主張することで、より有利に話し合いを進めることができます。 -
(2)調停委員を味方につける
調停委員は、公正・中立な立場で離婚調停に臨むため、基本的にはどちらか一方の味方をすることはありません。
しかし、調停委員も人間です。失礼な態度をとる、感情的になって誹謗中傷する、一貫性がない主張をするといったことがあると、調停委員に悪い印象を与えてしまいます。そうなると、調停での話し合いが困難になってしまう可能性があるため、失礼のないよう誠実に対応するように心がけましょう。 -
(3)弁護士に依頼する
離婚調停が初めての方は、不安や緊張から伝えたいことを満足に伝えることができないかもしれません。また、法的判断が必要な事項があったとしても、知識や経験不足から誤った判断をしてしまうリスクもあります。
離婚調停は、当事者だけでも対応できる手続きですが、有利に調停手続きを進めるには、専門家である弁護士に依頼するのがおすすめです。弁護士に依頼するメリットについては、4章で詳しく解説します。
お問い合わせください。
4、離婚調停を弁護士に相談するメリットとは?
離婚調停を弁護士に相談するメリットについて、3つご紹介しましょう。
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(1)協議離婚の段階から話し合いを任せられる
弁護士に依頼すれば、協議離婚の段階から相手方との話し合いを任せることができます。
当事者同士で話し合うと、どうしても感情的になってしまうこともあるでしょう。しかし、弁護士が代理人として交渉をすれば、冷静に話し合いを進めることが可能です。そのため、離婚調停へ発展する前に、離婚問題を解決できる可能性があります。
早期解決を希望するなら、離婚協議の段階から弁護士を介入させるのがおすすめです。 -
(2)有利な離婚条件で進められる可能性がある
離婚にあたっては、親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流、年金分割などの離婚条件の取り決めが必要になります。
適正な離婚条件で離婚するには、離婚問題についての知識や経験が不可欠です。そのため、専門家である弁護士に対応を委ねることで、有利な条件で離婚できる可能性が高まるでしょう。特に、養育費、慰謝料、財産分与などの金銭についての条件は、離婚後の生活に直結する問題です。不安なく離婚後の生活を送るためにも、弁護士のサポートを検討してみてください。 -
(3)調停期日への同席や離婚訴訟になった場合の対応を任せられる
弁護士は調停期日に同席できるため、安心して調停に臨むことができます。伝えたいことがうまく調停委員に伝わらないようなときでも、弁護士が補足をすることで、調停委員に説得的に離婚理由を伝えることができるでしょう。
また、調停が不成立となり、訴訟に発展したときも、引き続き弁護士が対応できるため、離婚成立までの精神的なストレスを軽減できます。
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5、まとめ
離婚調停では、法定離婚事由がなくても、双方の合意があれば離婚可能です。しかし、法定離婚事由があれば、離婚調停を有利に進められる可能性があるため、調停委員に伝えていくようにしましょう。さらに証拠を用意しておくことで、説得的に伝えやすくなります。
離婚調停を有利に進めるためには、知識と経験を有する弁護士のサポートが不可欠です。離婚調停をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています