夫の逮捕を理由に離婚できる? 離婚を進める方法とは

2023年06月22日
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夫の逮捕を理由に離婚できる? 離婚を進める方法とは

大阪府警が公表している犯罪統計によると、令和3年中に検挙された刑法犯の数は、1万3626人でした。

もし、突然に夫が逮捕されてしまったら、どうしたらよいかわからずパニックになってしまう方も多いでしょう。また、もともと夫婦仲がよくなかった場合には、夫の逮捕をきっかけに離婚を考えることもあるかもしれません。

本コラムでは、そもそも「夫が逮捕された」という理由で離婚をすることができるかどうかや、離婚を進めるための具体的な方法について、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説します。

1、夫が逮捕されたら離婚することはできる?

まず、夫が逮捕された場合に、離婚をすることができるかどうかについて解説します。

  1. (1)逮捕されたからといって有罪というわけではない

    逮捕とは、犯罪の疑いが生じた被疑者が逃亡または証拠隠滅をするおそれがある場合に、被疑者の身柄を拘束する手続きのことです。
    本当に罪を犯したのかどうかは、その後の捜査や裁判によって明らかにされていくため、逮捕された段階では、まだ有罪であるかどうかが確定したわけではありません。
    逮捕されたとしても、その後の捜査の結果、無実であることが判明して釈放される可能性もあります。

    そのため、夫が逮捕されたとしても、それだけで「犯罪者だ」と決め付けてはいけません
    本当に離婚をするかどうかについても、慎重に判断しましょう。

  2. (2)逮捕されたことを理由に離婚を請求することは難しい

    逮捕された夫が離婚に同意してくれるのであれば、逮捕されたことを理由に夫と離婚をすることも可能です。

    しかし、夫が離婚に同意してくれない場合には、最終的には裁判を起こして、裁判官に離婚を認めてもらう必要があります
    また、裁判離婚による離婚が認められるためには、「法定離婚事由」の存在が必要になります。具体的には、以下のような条件が必要とされるのです。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 3年以上の生死不明
    • 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    夫が逮捕されたという事情は、上記の法定離婚事由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性があります。
    しかし、先述した通り、逮捕されたというだけでは、有罪は確定しません
    そのため、実際には、逮捕されたというだけでは離婚を請求することは難しいといえます。

2、裁判で離婚が認められやすいケース

「逮捕された」というだけでは、それを理由にして離婚することは難しいといえます。
しかし、以下のような事情がある場合には、裁判による離婚が認められる可能性があります。

  1. (1)重大犯罪によって逮捕された場合

    夫が逮捕された理由が殺人罪や強制性交等罪などの重大犯罪であった場合には、離婚が認められる可能性があります

    重大犯罪を行った場合には、マスコミで大きく報道されてしまい、いままでと同様の生活をすることができなくなるおそれがあります。
    当然、夫と同様に婚姻生活を継続していくことも、難しくなります。
    したがって、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当して、離婚が認められる可能性が高いでしょう。

  2. (2)妻に対するDVによって逮捕された場合

    妻に対して暴力を振るったことが原因で逮捕された場合にも、離婚が認められる可能性があります

    配偶者に対する暴力は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する事情のひとつです。夫がDVによって逮捕されて、その後の裁判によって有罪となった場合には、「夫のDVが客観的に立証された」ということになります。
    裁判においても、夫がDVで有罪になったことを主張すれば、裁判所に離婚を認めてもらえる可能性は高いでしょう。

3、逮捕された夫と離婚する方法

夫が逮捕されてしまった場合には、以下のような方法で離婚の手続きを進めていくことになります。

  1. (1)面会で離婚の合意を得る

    夫が逮捕されてしまうと、夫の身柄は警察署の留置施設で拘束されてしまいます。
    逮捕から勾留までの最大72時間は、妻であっても、夫と面会をすることができません。
    そのため、夫が逮捕されているあいだは、離婚の話し合いを進めることはできないのです。

    逮捕後も引き続き身柄拘束の必要がある場合には、勾留という手続きに切り替わります。
    勾留された場合には、延長も含めると最大で20日間の身柄拘束が続きますが、逮捕と異なり、原則として面会を行うことが可能です。

    離婚をする場合には、夫と面会を行い、離婚を希望する旨を伝えて、夫の合意を得る必要があります。
    しかし、警察署での面会では、警察官の立ち会いのもと、20分程度しか面会ができませんので、一度の面会で離婚の合意を得るのは難しいでしょう

    何度か面会を重ねたのちに、夫から離婚の合意が得られた場合には、離婚届を差し入れして、夫に記入をしてもらいましょう。
    その後、市区町村役場に離婚届を提出すれば、離婚が成立します。

  2. (2)離婚調停を申し立てる

    夫との面会では離婚の合意が得られない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てる必要があります。
    もっとも、逮捕・勾留によって身柄拘束されている状態の夫は出頭することができないため、離婚調停を申し立てるのは、夫が釈放されてからになります。

    逮捕・勾留は最長で23日間ですので、その間に、離婚調停の準備を進めていきましょう。
    ただし、調停は、協議と同様に話し合いの手続きになります。
    そのため、夫が離婚を拒否し続けたら、調停は不成立となるのです

  3. (3)離婚裁判を起こす

    離婚調停が不成立になってしまった場合には、最終的には離婚裁判を起こして、裁判所に離婚を認めてもらう必要があります。
    また、夫が起訴後も釈放されない場合には、保釈が認められない限り身柄拘束が続くことになります。そのため、身柄拘束が長期間に及ぶような場合には、離婚調停を申し立てても無意味であるため、例外的に、離婚調停を経ることなく離婚裁判を起こすことが認められています。

    ただし、すでに説明した通り、離婚裁判によって離婚を認めてもらうためには、法定離婚事由の存在を主張・立証する必要があります。
    逮捕されたという理由だけでは、法定離婚事由としては不十分な場合もあります。
    そのため、裁判を起こす場合には、自分たち夫婦のあいだに法定離婚事由が存在するかどうか、しっかりと確認することが重要です

4、離婚を検討している場合は弁護士に相談を

離婚を検討している場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)法定離婚事由に該当するか判断してもらえる

    夫が逮捕されたら、それだけで離婚を考える方も多いと思いでしょう。
    しかし、夫が離婚に応じてくれない場合には、法定離婚事由に該当する事情がない限り離婚をすることはできません。
    逮捕時点では有罪が確定したわけではありませんので、「逮捕された」という理由だけでは離婚をすることができない可能性は高いといえます。

    ただし、逮捕理由や逮捕の経緯によっては、離婚をすることができる可能性もあります。
    まずは弁護士に相談して、法定離婚事由に該当する事情があるかどうかを判断してもらいましょう
    ご自身の状況を正確に理解することによって、今後の離婚の進め方に対する方向性も定まります。

  2. (2)相手との交渉を任せることができる

    DVによって逮捕された場合には直接話し合いをすること自体が困難といえます。
    また、とくに夫が性犯罪によって逮捕されたという場合には、相手に対して嫌悪感を抱いてしまい、話し合いもしたくないという状況になることもあるでしょう。

    このように、逮捕理由によっては、逮捕された夫と話をすることができない場合も少なくありません。
    弁護士であれば、本人に代わって夫と離婚の話し合いを進めることができます。
    「夫と顔を合わせて話をしたくない」という方は、弁護士に依頼をすることを検討してください

  3. (3)有利な離婚条件で離婚できる可能性が高くなる

    離婚をする場合には、親権、養育費、慰謝料、財産分与、面会交流などの離婚条件について決めていかなければなりません。
    しかし、離婚に関する知識や経験のない一般の方では、何をどのように決めればよいかわからず、不利な条件であることを知らないまま離婚に応じてしまうこともあります。

    弁護士であれば、豊富な知識や経験に基づき、最大限有利な条件で離婚をすることができるように、相手との交渉を進めていくことができます
    離婚条件の決め方に不安がある方や、「すこしでも有利な条件で離婚をしたい」という方は、弁護士に依頼することをおすすめします。

5、まとめ

夫が逮捕されたことによって、妻や子どもにはさまざまな影響が生じる可能性があります。逮捕理由やマスコミの報道によっては、普段どおりの生活を送ることができず、引っ越しや転校などを余儀なくされることもあるでしょう。

逮捕が原因で通常の夫婦生活を送ることが困難な状況になった場合や、夫がDVをしていた場合などには、夫が離婚に同意しなくても裁判によって離婚が認められる可能性もあります。
離婚を検討されている方は、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています