妻が勝手に借金していたことが発覚! 離婚の理由になる?

2023年03月28日
  • 離婚
  • 離婚
  • 妻が勝手に借金
妻が勝手に借金していたことが発覚! 離婚の理由になる?

厚生労働省が公表している離婚件数に関する統計資料によると、令和3年の大阪府内の離婚件数は、1万4594件でした。

婚姻生活を送る中では、住宅ローン、自動車ローン、教育ローンなどの借金をする場面もあるでしょう。お互いが借金のことを知っていれば特に問題はありません。

一方、妻が勝手に借金をして浪費やギャンブルなどをしていた場合、相手のことが信頼できなくなり離婚という言葉が頭をよぎる方もいるかもしれません。しかし、こうした理由で離婚はできるのでしょうか。また、妻が勝手に借金をした場合、夫にも返済義務が生じるのでしょうか。

今回は、妻が勝手に借金をした場合の離婚の可否、夫の返済義務などについて、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説します。

1、借金を理由に妻と離婚することはできる?

妻が勝手に借金をしていたことを理由に離婚をすることはできるのでしょうか。

  1. (1)話し合いでの離婚であれば借金を理由に離婚が可能

    離婚をする方法には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つの方法があります。

    協議離婚は、夫婦の話し合いによって離婚をする方法ですので、夫婦がお互いに離婚に同意をしているのであれば、どのような理由で離婚をするのかは問われません。そのため、妻が勝手に借金をしたという理由であっても離婚をすることができます。

    調停離婚は、家庭裁判所に離婚調停の申立てを行い、調停を成立させることによって離婚をする方法です。調停は家庭裁判所を介した手続きになりますが、基本的には、裁判所が指定した調停委員と当事者を交えた話し合いになりますので、協議離婚の延長と考えてもよいでしょう。

    調停離婚の場合にも、協議離婚と同様に離婚理由については問われることはありません。そのため、お互いが離婚に同意をすれば、妻が勝手に借金をしたという理由でも離婚をすることができます

  2. (2)裁判では妻が勝手に借金をしたというだけでは離婚は難しい

    夫婦の話し合い(協議離婚、調停離婚)では、離婚の合意が得られず離婚をすることができないという場合には、家庭裁判所の離婚裁判を起こす必要があります。この場合には、離婚をするかどうかは最終的に裁判官が判断することになります。

    裁判で離婚するために必要となるのが、以下の「法定離婚事由」です。

    • 不貞行為
    • 悪意の遺棄
    • 配偶者の生死が3年以上明らかでない
    • 強度の精神病にかかり回復の見込みがない
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由


    法定離婚事由に該当しない場合、裁判で離婚を認めてもらえません。妻が勝手に借金をしたという事情は、上記の法定離婚事由には該当しませんので裁判離婚をするのは難しいといえるでしょう。

    ただし、妻による借金額が高額であり、そのほとんどが浪費やギャンブルなどに費やされている等の理由で婚姻関係が破綻しているような場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚が認められる可能性もあります。

2、妻が勝手に借金をした場合、夫に返済義務はある?

妻が勝手に借金をした場合には、その借金を夫が返済する義務はあるのでしょうか。

  1. (1)原則として妻が勝手にした借金の返済義務はない

    妻が勝手に妻名義でした借金に関しては、原則として夫に返済義務が生じることはありません。

    金融機関や消費者金融などからお金を借りた場合には、お金を貸した債権者とお金を借りた債務者との間に金銭消費貸借契約が成立します。金銭消費貸借契約が成立すると、契約内容に従って、債務者は債権者に対してお金を返済する義務が生じます。

    このように借金の返済義務というものは、契約に基づいて生じる義務ですので、契約とは無関係な第三者には、借金の返済義務が生じることはありません

  2. (2)例外的に夫に返済義務が発生するケースとは?

    原則として妻が勝手にした借金については、夫には返済義務はありません。しかし、以下のようなケースでは、夫にも返済義務が生じる場合がありますので注意が必要です。

    ① 夫が借金の名義人であったケース
    妻がした借金であっても夫が名義人になっていた場合には、契約の当事者は妻ではなく夫になりますので、夫に返済義務が生じることになります。
    ただし、妻が勝手に夫を名義人にしたという場合には、無権代理行為となりますので、夫が自分名義の借金であると認めない限りは、夫に返済義務が生じることはありません。

    ② 夫が借金の連帯保証人であったケース
    夫が借金の名義人になっていなかったとしても、借金の連帯保証人になっていた場合には、主債務者である妻と連帯して借金の返済をする必要があります。
    ただし、妻が勝手に連帯保証人を夫にしていた場合には、夫には連帯保証人としての責任はありませんので、借金の返済義務はありません。

    ③子どもの養育や生活費のための借金であったケース
    妻が勝手にした借金であったとしても、借金の使途が子どもの養育費や生活費のためのものであった場合には、日常家事債務として夫にも返済義務が生じることがあります(民法761条)
    日常家事債務として夫にも返済義務が生じるのは、あくまでも日常の家事に関して生じた債務に限りますので、妻が浪費やギャンブルなどのためにした借金について返済義務はありません。
    ただし、日常家事債務にあたるかどうかについては、夫婦の収入や資産によって異なります。債務整理や離婚問題に実績がある弁護士に相談することをおすすめします

3、妻の借金を理由に離婚する場合、注意すること

妻の借金を理由に離婚をする場合には、財産分与の点に注意が必要になります。

  1. (1)財産分与とは

    財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を離婚時に清算する制度のことをいいます。婚姻期間中の夫婦の財産形成・維持に対する貢献度は、等しいものと考えられていますので、財産分与の割合は、原則として2分の1ずつとなります。これは、妻が専業主婦であったとしても変わりません。

  2. (2)財産分与と借金との関係

    財産分与の対象となる財産は、夫婦の協力関係によって維持形成した財産です。これを「共有財産」といいます。

    財産分与の対象となる財産には、プラスの財産だけではなく借金などのマイナスの財産も含まれることになります。その際には、当該財産の名義ではなく、夫婦の協力によって築いた財産であるかどうかが判断のポイントになります。

    たとえば、住宅ローン、教育ローン、生活費のための借金などは、夫婦が生活していくために必要な借金であるといえますので、財産分与の対象となる共有財産に含まれます。

    他方、妻が浪費やギャンブルのためにした借金や結婚前に負った借金などについては、夫婦の協力関係とは無関係な借金ですので、財産分与の対象外の特有財産になります。

  3. (3)借金が財産分与に含まれる場合の扱い

    借金が財産分与の対象に含まれる場合であっても、借金の名義人以外の人に借金の返済義務が生じることはありません

    借金の返済義務は、あくまでも債権者と債務者との間の契約によって生じるものですので、それとは無関係な夫婦の財産分与によって債務者が変更されることはありません。

    妻の借金も共有財産であるケースについて、具体例を挙げて考えてみましょう。

    • 夫の預貯金:1000万円
    • 妻の預貯金:500万円
    • 妻名義の借金:300万円
    • 共有財産総額:1000万円+500万円-300万円=1200万円
    • → 2分の1ずつ分けると夫が600万円、妻が600万円となる


    上記のケースでは、夫名義の預貯金が1000万円あると仮定しているため、夫が妻に400万円支払うという形で財産分与が行われます。借金の名義人は離婚をしたとしても妻のままですので、離婚後も妻が借金を返済していくことになります。

4、離婚の手続きと流れ

離婚をする場合には、以下のような流れで進んでいきます。

  1. (1)協議離婚

    協議離婚とは、夫婦の話し合いによって離婚をする手続きです。離婚する夫婦の大半はこの協議離婚によって離婚をしています。

    離婚の合意が得られた場合には、離婚届に記入をして、市区町村役場に提出すれば離婚が成立しますので非常に簡単な手続きといえるでしょう。ただし、夫婦間で養育費、慰謝料、財産分与などの離婚条件を定めた場合には、口頭の合意で終わらせるのではなく、必ず離婚協議書を作成しておくようにしましょう

  2. (2)調停離婚

    夫婦の協議では離婚の合意に至らなかった場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。離婚調停も基本的には話し合いの手続きとなりますが、話し合いをする場所が裁判所であり、調停委員が仲介に入ってくれるという点で、協議離婚とは大きく異なります。そのため、協議離婚では離婚の合意に至らなかったケースでも調停離婚で合意に至る可能性もあります。

    調停離婚が成立した場合には、その内容が調停調書にまとめられますので、後日調停調書を受け取り、離婚届と一緒に市区町村役場に提出すれば離婚が成立します。なお、協議離婚とは異なり、離婚届には相手方の署名押印や証人欄の記載は不要となります。

  3. (3)審判離婚

    調停で主要な離婚条件についての合意が得られているものの、感情的な理由やささいなすれ違いによって調停成立の合意が得られないという場合には、裁判官が一切の事情を考慮した上で、職権で離婚の判断を下すことがあります。これを「審判離婚」といいます。

    審判離婚は、内容に不服がある場合には不服申立ての手続きをすれば審判の効力が失われてしまいますので、実際にはほとんど利用されていない方法です。

  4. (4)裁判離婚

    調停が不成立となった場合には、最終的に家庭裁判所に離婚裁判を起こして、裁判官に離婚の可否を判断してもらうことになります。

    裁判官が離婚を認めるためには、民法が定める法定離婚事由が備わっていることが必要になりますので、離婚を求める側は、証拠に基づいて法定離婚事由に該当する事情を主張立証していくことになります。裁判手続きは、非常に複雑かつ専門的な手続きとなりますので、弁護士に依頼をして進めるようにしましょう

5、まとめ

離婚時の金銭問題について、冷静に話し合いをするのは困難なケースが少なくありません。当事者にとって精神的にも大きな負担となりますので、対応が難しいと感じる場合は、まずは弁護士にご相談ください。弁護士であれば、相手との代理交渉でご依頼者さまの負担を軽減し、より有利な条件で離婚できるよう主張します。離婚をお考えの方は、離婚問題に解決実績のあるベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています