離婚調停は弁護士なしでも戦える? 依頼すべきケースとメリット

2022年06月07日
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離婚調停は弁護士なしでも戦える? 依頼すべきケースとメリット

令和2年の大阪市天王寺区の離婚件数は142件、阿倍野区は156件でした。これだけ多くの世帯で離婚をしていれば、配偶者との離婚協議がまとまらないケースも少なくないでしょう。

話し合いを通じて離婚ができない場合、家庭裁判所に「離婚調停」を申し立てることになります。

今回は、離婚調停を弁護士なしで申し立てることのメリットやデメリット、弁護士に離婚調停の対応を依頼した方がよいケースなどについて、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「大阪市統計書(2020年版・最新)」(大阪市))

1、離婚調停は弁護士なしでも申し立てられる?

離婚調停とは、夫婦が離婚に関する話し合いを、調停委員による仲介の下で行う家庭裁判所の手続きです。日本では、話し合いで離婚が成立しない場合、すぐに裁判を起こせるわけではありません。裁判によって離婚したい場合は、必ずこの調停手続きを経ておく必要があります。

  1. (1)弁護士がいなくても離婚調停の申し立ては可能

    離婚調停を含めて、各種の裁判手続きを利用する際に、弁護士を代理人とするかどうかは本人の自由です。

    離婚調停に慣れているかどうかという問題はあるものの、少なくとも法律上・制度上は、弁護士なしでも離婚調停を申し立てることはできます。弁護士を立てずに調停を行う場合は、交渉から証拠の提示、手続きに至るまですべての対応をご自身で行う必要がある点に注意が必要です

  2. (2)離婚調停の進み方

    離婚調停は、裁判所で行われる法的手続きではあるものの、あくまでも夫婦が離婚について話し合ったうえで合意を得ることを目的としています。

    そのため、原則的には夫婦間で進めるべき話し合いに仲介人的な立ち位置となる男女1名ずつの調停委員が間に入り、それぞれの言い分を聞いていくという方法で進行します。話し合いの最中で調停室へ双方が同時に呼び出されることはなく、基本的にはそれぞれが順番に呼び出され、調停委員に対して自らの主張を行っていくことになります。最終的にはそれぞれの言い分を聞いた調停委員が双方の主張の落としどころを探りつつ提案し、双方が合意すれば調停が成立することになります。

    したがって、離婚調停は、完全な対立構造を前提とした訴訟よりも柔軟性が高く、本人だけで離婚調停に臨む当事者に対しても、配慮してくれる部分が大きいのが特徴です。離婚に関係する法律などを十分に理解していなくても、調停委員がその場の状況に応じて調整を試みるため、訴訟よりは弁護士なしでも対応しやすい側面があります。

2、弁護士なしで離婚調停を申し立てるメリット

弁護士に依頼せずに自身だけで離婚調停を申し立てるメリットは、「弁護士費用がかからない」という点に尽きます

離婚調停の弁護士費用はケースバイケースですが、最低でも数十万円、争う財産分与などの金額が大きければ数百万円に上ります。弁護士なしで離婚調停を申し立てれば、数十万円から数百万円に及ぶ弁護士費用を節約できる点が大きなメリットです。

なお、ベリーベスト法律事務所の離婚・男女問題に関する弁護士費用は、以下のページをご参照ください。
(参考:「離婚・男女問題 弁護士費用」(ベリーベスト法律事務所)

3、弁護士なしで離婚調停を行うデメリット

弁護士費用を節約できるからという理由で、弁護士なしで離婚調停を申し立てると、次のような不利益を被ってしまう可能性があります。少しでも不安に感じられる場合には、弁護士にご依頼いただくことをおすすめします。

  1. (1)調停委員に主張がうまく伝わらない

    調停委員は中立的な立場にあるとはいえ、夫婦どちらの主張が理に適っているかという点には大きな関心を持っています。そのため、離婚調停で有利な結果を得るためには、ご自身にとって有利な結論につながる主張を、調停委員に対して説得的に伝えなければなりません。

    しかし、弁護士なしで離婚調停を申し立てた場合、法的な論理に基づく説得的な主張を組み立てることが難しいといえます。特に、相手方には弁護士がついているなど交渉に長けているケースでは確実にあなたのほうが不利になりやすいのです。

    弁護士なしで対応しようとした結果、調停委員に対して主張がうまく伝わらず、離婚調停において不利な立場に置かれてしまうおそれがあります。この点は、弁護士なしで調停を進める最大のデメリットとなり得るでしょう。

  2. (2)相手の主張内容が適切かどうかわからない

    離婚調停では、相手もさまざまな主張を提示することが予想されます。

    相手から何らかの主張が提示された場合、その内容が適切・妥当かどうか、法的な観点から精査しなければなりません。しかし、弁護士なしで離婚調停を申し立てたケースでは、法的なアドバイスをしてくれる弁護士がいないので、相手の主張内容が適切かどうか判断できない可能性があります。

    その結果、ご自身にとって不当に不利益な内容の主張を受け入れて、後悔することになってしまうおそれがあるので要注意です

  3. (3)提出書類の準備が大変

    離婚調停では、調停委員に対して効果的に主張を伝えるため、裁判所にさまざまな書類を提出する必要があります。

    弁護士に依頼した場合には、提出書類の大半を弁護士が準備してくれるので、ご本人の負担は少なく済みます。これに対して、弁護士なしで離婚調停を申し立てた場合、提出書類をすべてご自身で準備しなければなりません。

    法律文書を作成することに慣れていない場合、離婚調停の提出書類を作成・準備するのは非常に大変です。何とか自力で提出書類をそろえることができたとしても、適切なものにならない可能性があるうえ、書類作成だけでかなり疲弊してしまうでしょう

  4. (4)必ず自分で調停期日に出席しなければならない

    離婚調停を申し立てると、おおむね1か月に1回程度、家庭裁判所によって調停期日が指定されます。弁護士なしで申し立てを行った場合、当然ながらご本人が調停期日に必ず出席しなければなりません。

    これに対して、弁護士にすべての対応を依頼しているケースでは、弁護士に調停期日へ代わりに出席してもらうことができます。離婚調停は平日に行われるため、そのたびに仕事を休んで出席するだけでも大変でしょう。

    また、調停室内で同席はしないものの、同じ裁判所の中で相手と顔を合わせてしまう可能性は否定できません弁護士に対応を依頼することで顔を合わせることはなくなります

  5. (5)取り決めるべき離婚条件に漏れが生じることがある

    離婚調停で話し合われる事項は、基本的に当事者同士の間で議論になっている事項に限られます。弁護士なしで離婚調停を申し立てた場合、いずれかの論点が見逃されてしまい、取り決めるべき離婚条件に漏れが生じる可能性があります。

    調停委員が多少アシストしてくれるケースはあるものの、当事者が特に問題にしていない事項については話し合われず、調停調書にも解決策が記載されません。

    本来、離婚に際して決めておかなければならない事項は、以下のとおりたくさんあります。

    • 財産分与(年金分割を含む)
    • 慰謝料
    • 婚姻費用
    • 親権
    • 養育費
    • 面会交流の方法
    など


    離婚後のトラブルを防止するためには、上記の事項を漏れなく取り決めておくことが大切です。

    必要な離婚条件を取り決め損なうと、後で改めて協議・調停などを行わなければならず、二度手間を強いられてしまうので要注意です。

4、弁護士に離婚調停の対応を依頼した方がよいケース

これまで解説したように、弁護士なしで離婚調停を申し立てることには、多くのデメリットが存在します。そのため、弁護士費用がかかるとしても、弁護士に離婚調停の対応を依頼するのがおすすめです。

特に以下のいずれかに該当する場合には、弁護士へのご依頼を強くおすすめします。

  1. (1)有利な条件で離婚を成立させたい場合

    弁護士に相談しながら離婚調停の準備を進めることで、各離婚条件につき、ご自身にとって有利な事情を効果的に主張できます

    その結果、調停委員にも主張内容が説得力をもって伝わり、離婚調停で有利な結論を得られる可能性が高まります。そのため、法的に適切な条件で離婚を成立させたい場合には、弁護士へのご依頼がおすすめです。

  2. (2)調停成立後のトラブルを防止したい場合

    弁護士は、離婚時に取り決めるべき離婚条件等を念頭に置いて、離婚調停で必要な事項をすべて取り決めることができるように対応を行います。弁護士を代理人として離婚調停に臨めば、必要な離婚条件を漏れなく解決し、調停成立後のトラブルを防止できます。

    離婚後のトラブルのリスクをできる限り抑えたい場合には、弁護士に離婚調停の対応を依頼するのがよいでしょう

  3. (3)相手が離婚そのものを争っている場合

    相手が離婚そのものに反対している場合、調停離婚が不成立となり、離婚訴訟(離婚裁判)へ発展する可能性が高いケースであると言えます。

    離婚訴訟は、離婚調停よりも厳格な手続きであり、法的な論理に基づく主張・立証の重要性がいっそう高まるものです。調停で主張した内容は裁判の審理でも加味されうることから、離婚訴訟を見据えて対応する場合には、当初から弁護士を代理人として離婚調停を申し立てておく方が、適切な対応を行えるといえます

5、まとめ

離婚調停を弁護士なしで申し立てると、弁護士費用は節約できるものの、手続きへの対応が非常に大変です。結果的に不利な結論を受け入れることになってしまうケースも多いため、弁護士なしで離婚調停を進めることはおすすめできません。

弁護士を代理人として離婚調停を申し立てれば、手続きの準備や対応を弁護士に一任できます。また、適正な条件で離婚を成立させられる点や、離婚後のトラブルを予防できる点も、弁護士に依頼する大きなメリットです。

ベリーベスト法律事務所は、離婚に関する法律相談を随時受け付けております。配偶者との離婚をご検討中の方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています