コンビニワープとは? 罪に問われうるケースと処罰内容
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大阪府警察が公開している統計によると、令和4年中に天王寺区で発生した交通事故の件数は345件でした。令和3年中の284件から60件以上の増加となったため、今後も大阪府警による交通取り締まりは厳しくなっていくでしょう。
毎年のように法律が改正され、守るべき交通ルールが増えています。しかし、問題視されながらもなかなか法整備が追い付かず、改善もみられないルール違反やマナー違反が存在していることも事実です。「コンビニワープ」と呼ばれる行為も、そのような違反のうちのひとつです。
本コラムでは「コンビニワープ」の違法性やコンビニワープをしたことが原因で警察の取り締まりを受けたり交通事故を起こしてしまったりしたときの罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説します。
1、「コンビニワープ」とは?
まずは「コンビニワープ」がどのような行為であるか、どのような問題点があるかについて解説します。
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(1)コンビニワープとはどんな行為なのか?
「コンビニワープ」とは、信号で規制されている交差点において、赤信号が青信号に変わるのを待たずコンビニエンスストアの敷地を通り抜けて近道をする行為の俗称です。
なお、「ワープ」行為の対象はコンビニエンスストアに限らず、交差点にある店舗・駐車場・空地などのさまざまな敷地が近道にされています。 -
(2)コンビニワープの違法性と問題点
コンビニワープは、道路ではないコンビニエンスストアの敷地を通り抜けるため、利用客の車や歩行者に接触してしまう可能性が高い危険な運転です。
とくに朝夕のラッシュ時には急いでいることから、コンビニエンスストアの敷地内だというのにまるで道路を走っているかのような高スピードでショートカットするドライバーも多く、警察による取り締まりを求める声も高まっています。
しかし、現在の法規制ではコンビニワープを直接取り締まる法令が存在していません。
道路交通法はあくまで「道路」における危険防止や安全や円滑を図る法律であるため、道路にあたらないコンビニエンスストアの敷地などでは適用されないのです。
店舗側も「利用客だ」と主張されると強く注意できず、危険な行為でありながら黙認されているという状況が続いています。
2、コンビニワープで警察の取り締まりを受ける可能性のあるケース
コンビニワープという行為そのものを直接取り締まる法令は存在しませんが、コンビニワープに関係する運転行為については警察の取り締まりを受ける可能性があります。
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(1)一時不停止
道路交通法第17条2項によると、コンビニエンスストアの敷地から出入りする際に歩道をまたぐ場合、車両は歩道の直前で一時停止し、かつ歩行者の通行を妨げないようにしなければなりません。
「止まれ」の標識や標示がない場合でも、歩道をまたいで道路と道路外の施設・場所を出入りする際に一時停止をしなければ法定一時不停止です。
道路交通法の定めでは3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられますが、一時不停止は「交通反則通告制度」の対象であるため、通常は違反切符による手続きを受けます。
違反点数2点の加算と普通車の場合は反則金7000円を納付すれば刑事処分は受けません。 -
(2)安全運転義務違反
コンビニエンスストアの敷地は道路にあたりませんが、不特定・多数の車や人が自由に通行できる場所は例外的に道路交通法が適用されることがあります。
道路交通法第70条によると、車両の運転手は、ハンドル・ブレーキなどの装置を確実に操作して、道路・交通・車両の状況に応じて他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければなりません。
この義務に違反すると「安全運転義務違反」になります。
コンビニワープの最中にスピードの出し過ぎや確認不足などでほかの車や歩行者に危険を及ぼすと3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
ただし、安全運転義務違反も違反切符による手続きを受けるのが一般的です。
安全運転義務違反には、違反点数2点が加算され、普通車の場合は9000円の反則金納付を求められます。 -
(3)刑法の建造物侵入罪
コンビニエンスストアの敷地は公の道路ではなく会社やオーナーが管理している私有地なので、管理者の意思に反して勝手に立ち入ることは許されません。
もし、コンビニエンスストアの敷地に「利用客以外の立ち入りお断り」といった看板などの標示がある場合には、利用客ではない車・人の出入りは管理者の意思に反した不法な侵入と捉えることも可能です。
コンビニワープは、法律に照らせば刑法第130条前段の「建造物侵入罪」が成立する可能性があります。
ただし、建造物侵入罪が成立するには、建物が付属している土地の周囲が門・壁・塀などによって囲まれており、外部との交通を制限されていなければなりません。
このような土地を「囲繞地(いにょうち)」といいます。
多くのコンビニエンスストアは駐車場への出入りの利便性などを考慮して囲いを設けていないので、たとえ管理者の意思に反した立ち入りでも建造物侵入罪が成立する可能性は低いでしょう。
たとえ建造物侵入罪が成立する状況でも「買い物をしようと思ったが気が変わったのでそのまま敷地を出た」というケースと判別しにくいので、適用は困難です。
もし建造物侵入罪が成立した場合には、3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
3、コンビニワープ中に交通事故を起こすとどんな罪になる?
コンビニワープが危険だと指摘されている理由は、交通事故を起こしてしまう可能性が高いからです。
では、コンビニワープ中に交通事故を起こすとどんな罪を問われるのでしょうか?
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(1)けが人が発生すれば過失運転致死傷罪に問われる
コンビニワープ中に車や人と接触するなどけが人が発生する事故を起こした場合は、自動車運転処罰法第5条に定められている「過失運転致死傷罪」に問われます。
過失運転致死傷罪は、自動車の運転において必要とされる注意を怠ったことで人を死傷させた者を罰する犯罪です。
相手にけがをさせた場合は「過失運転致傷罪」、相手が死亡してしまった場合は「過失運転致死罪」として区別します。
一時不停止や安全運転義務違反といった道路交通法にもとづく違反は、現場の道路形状や交通の状況などによって成立しないことがありますが、過失運転致死傷罪はこれらを問いません。
コンビニエンスストアの敷地という私有地における事故でも、人を死傷させてしまえば本罪が成立するのです。
罰則は7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金です。
なお、相手の傷害が軽いときは、情状によりその刑が免除されることがあります。
ここでいう「傷害が軽い」とは、単純には「けがの程度が軽い」という意味ですが、どれくらいの日数であれば「軽い」と判断されるかの明確な基準はありません。
治療に要する日数だけでなく、けがの内容や事故に至った背景・経緯、事故後の対応なども総合的に判断されるため危険なコンビニワープが原因であれば刑の免除を得るのは難しいといえるでしょう。 -
(2)けが人が発生していなくても物損事故として扱われる
たとえば、コンビニワープ中に買い物を終えた客が運転する車と接触したなどのケースでは、けが人が発生していなくても物損事故という扱いになります。
運転操作を誤ってコンビニエンスストアの建物や駐車場内の車止めポールなどに接触した場合も同様です。
物損事故には罰則がありませんが、過失の割合に応じて壊してしまった車や物を賠償する責任が生じます。
とくにコンビニワープ中は高スピードで通り抜けることが多く、周囲の確認もおろそかになりやすいため、重い賠償責任を負うことになる可能性が高いといえます。
4、コンビニワープでトラブルになったら弁護士に相談を
コンビニワープをしたことで警察から取り締まりを受けたり、交通事故を起こしてしまったりしたときは、解決に向けたサポートを依頼するため、まずは弁護士に連絡してください。
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(1)コンビニワープが違法にあたる状況だったかを正確に判断できる
コンビニワープは非常に危険な行為とではありますが、現状の法体制では直接取り締まりできる法令が存在しません。
警察による取り締まりを受けたとしても、それは「コンビニワープをした」こと自体ではなく、コンビニワープに伴った運転行為が理由となります。
一時不停止や安全運転義務違反などにあたるかどうかを判断するためには、実際の道路形状や現場の交通状況などを詳しく分析する必要があります、
専門的知識をもたない一般の方にとって、判断することは困難でしょう。
自分自身の運転が違反にあたるかどうかがわからず、取り締まりに疑問を感じた場合には、弁護士に相談してください。
詳しい事情を説明すれば、コンビニワープが違法にあたる状況だったのかどうかについて、弁護士に正確な判断をしてもらえます。
取り締まりに異議を申し立てる際の流れや対応などのアドバイスも得られるので、交通トラブルに詳しい弁護士に相談してサポートを受けましょう。 -
(2)交通事故トラブルの穏便な解決が期待できる
コンビニワープが原因で交通事故を起こして人を死傷させてしまった場合には、過失運転致死傷罪に問われることになります。
過失運転致死傷罪は犯罪であるため、物損事故を起こしたときのように「事故処理を済ませたら、あとは自動車保険の会社に任せておけばよい」というわけにはいけません。
懲役・禁錮・罰金といった刑罰の規定があるため、有罪判決を受ければ前科がついてしまい、資格のはく奪や会社からの解雇といった処分を受けるおそれもあるためです。
有罪判決を受けること避けるためには、裁判になること自体を回避するために不起訴を目指すことが最善です。
被害者への謝罪や損害賠償を尽くして示談交渉を成立させたり、今後はコンビニワープなどの危険な運転行為をしないと誓約したりするなどの対処をすれば、検察官による判断に影響を与えて不起訴となる可能を高められます。
ただし、このような対応をとるためには、交通事故トラブルの解決実績を豊富にもつ弁護士によるサポートが不可欠です。
5、まとめ
朝夕のラッシュ時は気が急いでしまうものです。
赤信号を待つよりも「コンビニワープ」をしたくなるかもしれませんが、交通事故につながるおそれがあるので、絶対にやめましょう。
現状、コンビニワープを直接取り締まる法令は存在しませんが、道路の形状や現場の交通状況などによっては警察の取り締まりを受ける可能性があることを認識しておいてください。
コンビニワープによってトラブルに発展してしまった場合は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
交通法令や交通トラブルの解決実績が豊富な弁護士が、刑事裁判となって有罪判決を受けるという事態を避けるために、被害者との示談交渉を含むさまざまな対応を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています