盗撮動画の販売は逮捕される? 逮捕されるケースや逮捕後の流れ
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令和6年5月、関西で女性のスカートの中を盗撮した動画を、販売する目的で保管していた男性2人が逮捕されました。
このように他人の下着姿や胸など、性的な部位を盗撮した動画を販売すると、犯罪の疑いで逮捕されるおそれがあります。出来心から盗撮動画を販売してしまったら、速やかに弁護士へご相談ください。
本記事では、盗撮動画を販売する行為がどのような罪に当たるのか、逮捕されるケースなどについて、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説します。
1、盗撮動画の販売は、どのような罪に当たるのか?
盗撮した動画や画像は「性的影像記録」と呼ばれます。駅でスカートの中を撮影した動画や、隠しカメラによる性行為の盗撮動画などが典型例です。
性的影像記録を販売すると、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(以下「性的姿態撮影等処罰法」)で処罰されることがあります。
また盗撮行為や盗撮動画を販売、販売目的で保管することも性的姿態撮影等処罰法に当たる場合があるので、詳しく紹介しましょう。
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(1)性的影像記録提供等罪(提供罪)
性的影像記録を他人に提供した者は、性的姿態撮影等処罰法の性的影像記録提供等罪(提供罪)によって「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」が科されます(同法第3条第1項)。なお、令和7年6月より前は、拘禁刑に代わり懲役が科されます。
(例)- 盗撮動画を他人から仕入れて、第三者に販売した場合
- 自分で盗撮した動画を第三者に販売した場合
【不特定もしくは多数の者に提供などすると刑罰が重くなる】
提供罪のなかでも、性的影像記録を不特定もしくは多数の者に提供、または公然と陳列した者は「5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金」に処され、またはこれらが併科されます(同条第2項)。こちらも令和7年6月より前は、拘禁刑に代わり懲役が科されます。(例)- 盗撮動画をウェブサイト上で売り出した場合
- 盗撮動画のDVDを店頭に陳列した場合
【提供・販売行為は「わいせつ物頒布等罪」にも該当する】
令和6年6月に性的姿態撮影等処罰法が施行されるまで、性的影像記録の提供・販売は「わいせつ物頒布等罪」などで処罰されていました。わいせつ物頒布等罪は、わいせつな動画類を不特定または多数の人に対して頒布(はんぷ)または公然と陳列する行為で成立します。法定刑は「2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役と罰金の併科」です(刑法第175条第1項)。
性的姿態撮影等処罰法の施行により、性的影像記録の販売に対する刑罰は厳罰化されました。 -
(2)性的影像記録保管罪(保管罪)
性的影像記録を提供し、または公然と陳列をする目的でそれを保管した者は、性的影像記録保管罪(保管罪)によって処罰されます。保管罪の法定刑は「2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金」です(性的姿態撮影等処罰法第4条)。こちらも令和7年6月より前は、拘禁刑の代わりに懲役が科されます。
(例)- 盗撮動画を販売するために、発売前に自宅で保管した場合
なお、提供罪と保管罪が両方成立する場合は「牽連(けんれん)犯」となり、どちらかの重い方の刑によって裁かれます(刑法第54条第1項)。
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(3)性的姿態等撮影罪(撮影罪)
他人の性的な部位を盗撮した場合には、性的姿態等撮影罪(撮影罪)が成立します。撮影罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」で、令和7年6月より前は拘禁刑の代わりに懲役が科されます(性的姿態撮影等処罰法第2条)。
(例)- 駅や電車内で他人のスカートの中を盗撮した場合
- 隠しカメラを用いて、他人の性行為を盗撮した場合
なお、撮影罪と、提供罪や保管罪が複数成立する場合には、併合罪として裁かれます(刑法第45条)。
2、盗撮動画の販売は逮捕されやすい|逮捕につながる理由とケース
盗撮動画の販売者は、購入者よりも逮捕されやすい傾向にあります。その理由や、逮捕につながるケースについて紹介しましょう。
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(1)盗撮動画の販売者が逮捕されやすい理由
性的な部位の動画撮影、保管、提供・販売はいずれも犯罪です。しかし、実際に逮捕されやすいのは、提供・販売を行った人の傾向があるようです。
撮影や保管の場合、自分以外は犯罪行為を知らないケースもありますが、提供・販売の場合は、提供を受けた人も存在します。その人が通報したり、店舗やウェブサイトで盗撮動画を販売しているところを被害者などが発見したりする可能性もあります。より人目にさらされるからこそ、提供・販売行為で逮捕されるケースは多いといえるでしょう。 -
(2)盗撮動画の販売によって逮捕される可能性が高いケース
販売行為のなかでも、販売者が大きな利益を得ている場合は、処罰される可能性が高まります。大きな利益を得た販売者は、多くの盗撮動画を扱っていたり、より多くの人に販売したりしているケースが多く、被害者数や被害額が増えるためです。
また、顔にモザイクがかかっていないなど、盗撮動画に映っている人を特定しやすい状態になっている場合も、販売者が逮捕される可能性が高いと考えられます。
一刻も早く盗撮動画の販売を止めないと、個人情報が特定されるなどして、被害者のプライバシーに対する侵害が拡大してしまうためです。
3、盗撮動画の販売で逮捕された後の流れ
盗撮動画を販売した疑いで逮捕された場合の、刑事手続きについて紹介します。
そもそも逮捕は、住所不定、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるといった理由で、警察などに身柄を拘束されることを指します。つまり逮捕の要件を満たさないと判断された場合は、被疑者は逮捕されずに捜査が進むこともあります。
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(1)逮捕~検察官送致~勾留請求
逮捕されると、まず留置場で身柄を拘束され、警察官から取り調べを受けることになります。ただし、被疑者には黙秘権があるので、取り調べに対しては答えなくても構いません。
そして逮捕から48時間以内に、警察官から検察官へ被疑者の身柄が送致されます(刑事訴訟法第203条第1項)。
検察官は被疑者に対して取り調べを行った後、被疑者を受け取ってから24時間以内(かつ逮捕から72時間以内)に、被疑者の身柄を拘束し続ける「勾留請求」を行うかどうか判断します(同法第205条第1項、第2項)。検察官によって勾留請求がなされなかった、あるいは勾留請求が行われたが裁判官によって認められなかった場合、被疑者の身柄は解放されます。 -
(2)起訴前勾留~勾留延長~起訴
勾留請求がなされ、さらに勾留の理由や必要性があると裁判官が判断した場合には、被疑者について勾留状を発します(刑事訴訟法第207条、第60条)。勾留理由は住居不定、証拠隠滅や逃亡のおそれがあることなどが挙げられます。
勾留状が発せられた場合、被疑者の身柄拘束が逮捕から起訴前勾留に切り替わります。起訴前勾留の期間は10日間までですが、やむを得ない事由があるときは最長20日間まで延長可能です(同法第208条)。
勾留期間が満了するまでに、検察官は被疑者を起訴するかどうか判断します。不起訴となった場合は、被疑者の身柄は解放されます。
ただし、犯罪の嫌疑が確実であっても、検察官の判断によって不起訴となることがあります(=起訴猶予)。 -
(3)起訴後勾留・公判準備
被疑者が起訴された場合は「被告人」へと呼称が変わり、起訴後勾留によって引き続き身柄が拘束されます。
起訴後勾留へ移行すると、被告人は裁判所に対する保釈請求ができるようになります(刑事訴訟法第89条、第90条)。保釈が認められた場合には、保釈保証金を預けることを条件に、被告人の身柄が一時的に解放されます。
起訴後は、弁護人と相談しながら、公判手続の準備を整えましょう。 -
(4)公判手続(刑事裁判)・判決
起訴後勾留に移行してから1か月後程度を目安に、公判手続(刑事裁判)が開催されます。
公判手続では、検察官が被告人の犯罪事実を立証します。被告人側は罪を認めたうえで、犯行の動機や共犯者の有無、自身の生い立ちなど、被告人自身に有利な事情を述べ、裁判官に量刑を軽くするよう求めます。または罪を否認して検察官と争うことも可能です。
公判手続の審理が熟した段階で、裁判所は有罪または無罪の判決を言い渡します。有罪であれば、判決主文において量刑も示されます。
判決に不服がある場合は、検察官、被告人ともに控訴が認められています。なお、第一審判決に対しては高等裁判所への控訴、控訴審判決に対しては最高裁判所への上告が認められ、計2回まで審理のやり直しを求めることが可能です。
控訴・上告の手続きを経て判決が確定し、有罪であれば刑が執行されます。
ただし、刑の執行が猶予されることもあります。たとえば、「懲役3年執行猶予5年」の判決が言い渡されたとしましょう。この場合、執行猶予として刑に服さずに生活している5年の間に別の罪を起こさなければ、刑罰である懲役3年の刑の言い渡しは効力を失います。
4、盗撮動画の販売で、逮捕の不安を抱えている方は弁護士へ相談を
盗撮動画の販売容疑で逮捕されるのではないかと不安に感じている方は、すぐに弁護士へ相談しましょう。
弁護士は被害者との示談交渉を行えるため、逮捕や重い刑事処分を避けられる可能性が高まります。また、逮捕されてしまった場合でも、取り調べに臨む際の方針や公判手続きの準備などについて、弁護士からアドバイスやサポートを受けることが可能です。
盗撮動画の販売による処罰を回避し、被害者との間で穏便にトラブルを解決するためには、弁護士のサポートが必要不可欠です。
お問い合わせください。
5、まとめ
盗撮動画を販売する行為は、さまざまな種類の犯罪に該当し、警察に発覚すると逮捕される可能性が高まります。心当たりがある場合は弁護士に相談し、アドバイスを受けることを検討しましょう。
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盗撮動画の販売を理由に逮捕されるのではないかと不安な方や、実際に家族が逮捕されてしまった方は、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスへご相談ください。
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