自転車を勝手に移動したら罪になる? 違法駐輪にはどう対応すべきか

2024年11月06日
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自転車を勝手に移動したら罪になる? 違法駐輪にはどう対応すべきか

天王寺区は、放置自転車対策の一環として、区のホームページ上で天王寺区周辺の駐輪場情報を掲載しています。

自分の敷地内に無断で駐輪している見知らぬ自転車があった場合、困ってしまうでしょう。敷地外に移動させたいと思うかもしれません。しかし、たとえ違法に駐輪された自転車だとしても、勝手に移動させることで罪に問われる可能性があるということをご存じでしょうか。

この記事では、他人の自転車を勝手に移動させた場合に成立しうる犯罪や、違法駐輪への対処法について、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士がわかりやすく解説します。


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1、自転車を勝手に移動させたら犯罪?

他人の自転車を勝手に移動させた場合、犯罪が成立するケースと成立しないケースがあります。まずは、犯罪が成立する要件や該当する刑罰について解説します。

  1. (1)罪に問われるケース

    他人の自転車を移動させる行為は、以下の犯罪に該当する可能性があります

    • 窃盗罪
    • 占有離脱物横領罪
    • 器物損壊罪


    それぞれの犯罪について解説します。

    ・ 窃盗罪
    窃盗罪は、「他人の財物を窃取した」場合に成立する犯罪です(刑法第235条)。

    「窃取」とは、他人の所有する財物を持ち主の意思に反して、自己または第三者の占有に移転することを指します。つまり、他人の物を勝手に移動させる「占有侵害+占有移転」がある場合に、初めて窃盗罪が成立することになります。

    占有の有無については、「占有の事実」と「占有の意思」を総合し、社会通念に従って判断されます。
    たとえば、自転車の持ち主は施錠をしており、短時間で戻るつもりでその場を離れたという場合に自転車を勝手に移動させると、自転車の占有は持ち主にあるとして「窃取した」と判断される可能性があります。

    窃盗罪の法定刑は、「10年以下の懲役」または「50万円以下の罰金」です。

    ・ 占有離脱物横領罪
    占有離脱物横領罪は、「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した」場合に成立する犯罪です(刑法第254条)。

    占有離脱物横領罪の対象は、「占有を離れた」物、つまり誰の占有にも属さない物(遺失物や漂流物など)や委託に基づかない占有物(誤って払った金銭・誤配達された郵便物など)が該当します。
    一方で、「他人の物」に該当しない、所有権を放棄した物や無主物については占有離脱物横領罪の対象からは除外されます。

    次に、占有離脱物横領罪の「横領」とは、不法に物を得る意思を実現する一切の行為をいいます。
    不法領得(ふほうりょうとく)の意思には、2つの要素があります。
    ひとつは、所有権利者を排除して他人の物を自己の所有物とする意思(権利者排除意思)で、もうひとつは、売却する、他人に譲渡するなど、経済的用法に従って利用処分する意思(利用処分意思)です。
    なお、占有離脱物横領罪は、占有侵害の有無は問題になりません。

    占有離脱物横領罪の法定刑は、「1年以下の懲役」または「10万円以下の罰金」です。

    ・ 器物損壊罪
    他人の物を損壊すると、器物損壊罪が成立します(刑法第261条)。
    ただし、「損壊」とは、物理的な損壊だけでなく、隠匿(隠す)行為など、その物の利用を阻害する一切の行為が含まれます。つまり、他人の財産の利用価値を損なう行為で、その財産の使用を妨げたときに成立する犯罪です。

    他人の自転車を勝手に移動させて処分したり、簡単には見つけられないような場所にしまい込んだりした場合には、器物損壊罪に問われる可能性があります。

    器物損壊罪の法定刑は、「3年以下の懲役」または「30万円以下の罰金もしくは科料」です。

  2. (2)罪に問われないケース

    一方で、自転車を勝手に移動させたとしても罪に問われないケースがあります。

    ・ 自転車を敷地外に移動させたケース
    自転車を敷地外に移しただけの場合や、駐輪していた場所から探せばすぐにわかるような場所に移動した場合は、放置自転車を「隠匿した」とはいえないため、犯罪に該当しない可能性が高いでしょう。

    これらのケースでは、自転車を自分の物にしたわけではなく、必ずしも自転車の効用を害したとはいえないからです。

    ・ 使用窃盗のケース
    あとで返すつもりで、他人の物を無断で一時的に利用する行為は「使用窃盗」と呼ばれます。

    窃盗ではあるものの、状況によっては犯罪には該当しない可能性があります。窃盗罪の成立には、窃盗の故意に加えて「不法領得の意思」が必要であるとされているためです。無断一時使用の場合には「権利者排除意思がない」ため、窃盗の主観的要件を欠くことになります。ただし、学説で議論があり、裁判例も分かれるところです。

    一時的に使用する意図であっても、その間の使用が所有者の利益を著しく侵害する場合や、返還の可能性が低い場合等には、窃盗罪が成立する可能性があります。
    使用窃盗については、その事案ごとに判断が異なるため、安易に考えないほうが良いでしょう。

2、違法駐輪の対処法

自転車を勝手に移動させると罪に問われる可能性があります。では、違法駐輪された場合は、泣き寝入りするしかないのでしょうか。対処法について解説します。

  1. (1)警察に連絡する

    違法に駐輪している自転車を見つけた場合は、まず警察に連絡しましょう。

    放置自転車が遺失物と判断された場合には、「遺失物法」の規定に従って、基本的には持ち主に返還してもらえます。
    放置自転車が盗品の場合には、所有者が警察に盗難届を提出している可能性があります。このような場合には、所有者に自転車を返還するため、警察が放置自転車を引き取ってくれる可能性が高いでしょう。

  2. (2)所有者が特定できた場合

    放置自転車が遺失物ではなかった場合は、警察に自転車の所有者を特定できたかを確認しましょう。特定できた場合は、持ち主に連絡し撤去を求めます。

    特定できたものの、持ち主が撤去に応じない場合や、連絡がつかない場合は、土地の所有権に基づき、妨害排除請求訴訟を提起することになります。判決が出たのち、自転車を撤去することができます。

  3. (3)所有者が不明の場合

    所有者が不明の場合は、所有者のない動産として自転車を処分することが考えられます(民法239条1項)。もっとも、所有権が放棄されているかどうかは、慎重に判断する必要があります。

    まずは、「持ち主が自転車を撤去しない場合は処分する」といった旨の警告文を一定期間掲示すると良いでしょう。このように、相当期間を確保して警告を行うことで、所有者が名乗り出てきた場合の事後的な損害賠償請求のリスクを回避できる可能性が高まります。処分については、他の状況を勘案しつつ慎重に判断したほうが良いでしょう。

3、放置自転車を勝手に自分の物にしたら犯罪?

放置自転車であっても、勝手に自分の物として使用した場合は、窃盗罪や占有離脱物横領罪に問われる可能性があります。

所有者に自転車の占有があると認められる場合、自転車を無断で自分の物にする行為は所有者の占有を侵害することになるため、「窃盗罪」にあたる可能性があります。

一方、所有者が自転車の占有を失っている場合には、誰の占有にも属していない他人の物が自己の占有下にあるといえるため、「占有離脱物横領罪」にあたる可能性があるでしょう。

ゴミとして捨てられていた場合でも、アパートのゴミ置き場やゴミ捨て場などに関しては管理者や市区町村の管理権が及んでいる可能性がありますそのため、勝手に持ち去ると窃盗罪や「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」違反などに該当するおそれがあります。

4、刑事事件化したら弁護士に相談すべき理由

自身が管理する敷地内に放置された自転車であっても、勝手に移動すると刑事事件に発展する可能性があります。

軽微な犯罪と思われるかもしれませんが、窃盗容疑などの場合には逮捕されることもあります。刑事事件は初期段階での対応が非常に重要となるため、警察から連絡が来た場合は速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、次のような活動を通じて、被疑者の立場を守りつつ事件の最善の解決を目指します

  • 被疑者の権利保護と法的助言
  • 逮捕された場合、身体拘束からの早期解放に向けた活動
  • 被害者との示談交渉
  • 捜査機関との交渉および証拠の分析


なお、被害者がいる事件においては、示談の成立が特に重要です。ただし、当事者が直接示談交渉を行うことは、事態を悪化させることになりかねません。必ず弁護士に依頼して交渉を進めることが大切です。

5、まとめ

この記事では、放置された他人の自転車を勝手に移動した場合に、成立する可能性のある犯罪について解説しました。

放置自転車を移動させたことで刑事事件に発展した場合には、すぐにベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士にご依頼ください。
刑事事件は初期対応が非常に重要です。刑事事件の経験が豊富な弁護士が迅速に対応し、早期解決を目指して全力でサポートしますので、ぜひご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています