被害届を取り下げてもらう方法はあるのか? できることや注意点

2024年07月03日
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被害届を取り下げてもらう方法はあるのか? できることや注意点

「被害届」とは、犯罪にあった被害者がその事実を警察に申告する届け出です。被害届が受理されると捜査が始まり、逮捕・起訴される可能性があります。

では、思わぬトラブルの結果、相手から「被害届を出す」といわれてしまったらどうすればよいのでしょうか。今後どうなるのか、被害届は取り下げてもらえないのか、さまざまな不安に対して最適な対策をとるためには、刑事事件の実績がある弁護士にすぐにでも相談することが大切です。

今回は、被害届の概要と取り下げてもらう方法について、ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスの弁護士が解説します。

1、被害届とは

被害届とは、被害者が犯罪被害を受けたことを警察に申告するための書類のことをいいます。被害届が警察に受理されると、被害届に基づき捜査が開始されます。

  1. (1)被害届が提出されると原則受理される

    警察には、原則として提出された被害届を受理する義務があります(犯罪捜査規範61条)。ただし、実際に警察が捜査を行うかどうかは警察の判断に委ねられます。被害の内容が著しく信ぴょう性に欠けていたり、公訴する時効が過ぎていたりすれば、捜査が行われなかったり受理そのものがされないこともあります。

    一般的には、被害や犯罪があった可能性が高いと判断された場合に捜査が開始されます。捜査が開始され、犯人の疑いがあると捜査機関が判断すると、逮捕・起訴され、前科がつく可能性があります。

  2. (2)被害届が提出されたか調べる方法

    被害届が本当に提出されたかどうか調べる方法はありません。なぜなら、被害届は、捜査のきっかけになる情報であり、漏えいは許されないからです。そのため、ある日突然、警察から出頭要請がくる可能性もあります。被害届が出された可能性があり身に覚えがある場合には、早期に弁護士に相談することをおすすめします。

  3. (3)被害届を取り下げるとどうなるのか

    被害届が取り下げられれば、これ以上捜査されることがなくなり、捕まることも裁判になることもないと思う方もいるかもしれません。しかし、被害届は、あくまで被害があったことを申告する書類であり、捜査のきっかけとなる書類に過ぎません。そのため、重大な犯罪であると捜査機関が判断すれば、その後も捜査が続けられ、逮捕、起訴される可能性があります

  4. (4)被害届と刑事告訴の違い

    刑事告訴とは、被害者などが警察等の捜査機関に犯罪があったことを申告し、処罰を求める意思表示のことをいいます。他方で、被害届は、あくまで被害があったことを申告するものであり、処罰を求める意思まではないと考えられています。そのため、“処罰の意思の有無”が被害届と刑事告訴の大きな違いです。ちなみに、被害を受けていない第三者が処罰を求める意思表示をした場合には、刑事告発といいます。

  5. (5)刑事告訴が必要になる罪もある

    通常、被害があった場合に提出されるのは、被害届だけですが、罪によっては、刑事告訴が必要とされている罪もあります。

    たとえば、器物損壊罪や名誉毀損罪、侮辱罪などの場合には、刑事告訴が必須です。これらの罪は、親告罪であり、起訴するために告訴を要求しているからです。

    告訴を受けた捜査機関は、事件の捜査を行う義務が発生します。そのため、親告罪にあたる罪を犯し、「被害届を提出した」といわれた場合には、刑事告訴も行われている可能性があります。

2、被害届が取り下げられないとどうなる?

被害届が取り下げられないと、捜査が開始され逮捕されるリスクがあります。逮捕となれば、起訴、裁判と進み、有罪になれば前科がつくおそれもあります。

一方、被害届が取り下げられると、当事者間での解決がなされたとして捜査が打ち切られ、不起訴処分となる可能性が高まります。被害届を取り下げてもらうというのは、捜査機関の判断に大きな影響を持つのです。

もっとも、被害届が取り下げられたという事実自体に法的な効果があるわけではありません。そのため、被害届が取り下げられたとしても必ず不起訴になるとは限らないため、注意が必要です。

なお、被害届の取り下げには、期間の制限はありません。起訴前はもちろん起訴された後でも、被害届の取り下げによって執行猶予がつくなど、裁判へ影響を及ぼすことがあります

事件を穏便に解決したいのであれば、できる限り早く弁護士に相談し、示談により被害届を取り下げてもらうよう働きかけることが肝心です。

3、被害届を取り下げてもらうためにできること

被害届を取り下げてもらうためにはどのようなことができるのでしょうか。一般的に「反省・謝罪をする」「示談交渉」の2つがあります。また窃盗や器物損壊などの場合は、「被害弁償」も有効な手段です。

以下、それぞれを解説します。

  1. (1)反省・謝罪をする

    まずは自分が犯してしまった罪を反省して、被害者に向き合うことが重要です。「自分の身勝手な行動により被害を与えてしまい申し訳ございません。深く反省しています。」と真摯(しんし)に謝罪し、反省の意思を相手に示すことが大切です。

    なお、こうした謝罪の気持ちも、相手の気持ちを無視して直接行うとかえって悪化するケースもあります。手紙(謝罪文)にして弁護士を介して渡すのが得策といえます真摯な謝罪が伝われば、被害届を取り下げてくれる可能性があります

  2. (2)示談交渉する

    示談とは、加害者と被害者が、条件を提示し、その条件に納得して合意する和解契約のことをいいます。

    示談における条件では、一般的に、慰謝料等を含めた示談金の提示、被害届の取り下げ、刑事告訴しない旨の約束、などを提示します。示談が成立すれば、加害者と被害者との事件に関する関係が清算されます

    示談書は、確実に被害届を取り下げてもらう約束をしたことを警察などの捜査機関に示す証拠として提出することができます。

  3. (3)被害弁償する

    窃盗などで被害届を提出されてしまった場合には、被害の弁償と謝罪をすることで、被害届を取り下げてくれることがあります。たとえば、酔っぱらって店内の食器や家具を器物損壊してしまったというケースで、弁償金を支払うことで取り下げてもらうなどのケースもあります。

    ただし、被害者によっては、絶対に処罰してほしいから被害弁償を受け取らないということもあります。そのような場合、一度弁護士に相談をして、示談と一緒に被害弁償についても交渉してもらうのが被害届を取り下げてもらうための第一歩です。

4、被害届の取り下げに関する注意点

被害届を一刻も早く取り下げてほしいからといって、焦って行動するとかえってトラブルになるリスクがあります。被害届を取り下げてもらうために注意しなければならないことを解説します。

  1. (1)被害者と直接連絡をとってはいけない

    示談をしたいと考え、被害者の連絡先を知っていたとしても突然連絡しないようにしましょう。もし、もともと知り合いだったとしても同様です。被害を受け、被害届まで提出している関係になってしまったからです。

    伝え方によっては、相手に脅されていると感じて、警察に相談してしまう可能性もあります。さらには、警察や検察官に証拠隠滅をしようとしていると捉えられ逮捕される可能性が高まります。まずは弁護士を通して被害者と連絡してもらうことが必要です。

  2. (2)知人を通じて取り下げを依頼してはいけない

    直接の連絡ではなく、共通の知人を通じて、被害届を取り下げてもらうよう依頼することを考えるかもしれません。しかし、知人を通じて交渉を行うと、話し合いが進まないどころか、状況が悪化するおそれもあります。

    また、直接取り下げをお願いした場合と同様、捜査機関に証拠隠滅をしようとしていると捉えられる可能性があります。そのため、共通の知人を通じて取り下げを依頼することもしないようにしましょう。

  3. (3)被害届を理由に高額な金銭を要求されても応じない

    「被害届の提出をするぞ」と脅されたり、「被害届を取り下げてやるから○○万円支払え」と脅されたりしても焦って要求に応じてしまってはいけません

    特に示談金の相場を超えた高額な金銭を要求してきた場合には、被害届を理由にお金の請求が続く可能性があります。そうした場合には、一刻も早く一度弁護士に相談し、アドバイスを受けるようにしましょう。

  4. (4)被害届の取り下げをしたいなら弁護士に相談する

    被害届を取り下げてほしい場合には、まずは弁護士に相談しましょう。弁護士を介すことで、示談交渉を受けてくれる場合もあります。また、どのような内容で示談書を作成し、示談するかということについてもアドバイスをもらうことができます。

    捜査開始して間もないタイミングであれば、被害届を取り下げてもらうことで逮捕を回避できる可能性もあります。そのため、「被害届を提出した」といわれたら、すぐに弁護士に相談するのがおすすめです。

5、まとめ

被害届を取り下げてもらうことで、今後の逮捕や起訴、そして刑期にも大きな影響があります。そのため、少しでも早い段階で被害届を取り下げてもらうことが重要です。取り下げてもらうためには、弁護士を通じて早期に示談を行い、成立させることがカギになります。

ベリーベスト法律事務所 天王寺オフィスでは、刑事事件の経験がある弁護士が迅速に対応します。もし被害届を提出したといわれてしまったら、まずは当事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています